低温・日照不足で生育遅れ、
凍霜害で農産物の被害甚大
大手スーパーが“安売り”
負担を納入業者に押し付けか
3月からの低温と日照不足、4月には満開の桜の花に雪が降るという異常気象、そして凍霜害の発生で農産物の生育が大幅に遅れ、被害が発生しています。
各地から農民連本部に寄せられた報告によると、「盆地状になっているため冷気が停滞し、柿の新芽が凍結し全滅」「低温や霜害で梅の着果率は6割程度」(和歌山)、「レタスなどの野菜の生育が半月遅れている」(神奈川)、「ハウストマトは、いつもなら色づくころなのにその気配すらない、油代が大変」(愛知)など、被害は甚大です。気象庁は、「低温は今後も続く」としており、農家の不安は募るばかりです。
野菜高騰
こうしたなかで、野菜が品薄となって相場が高騰し、マスコミは連日、“野菜の高値”を報道。農水省は、農家に早出しや規格外品の出荷を呼びかけ、早出し奨励金まで打ち出しています。
一方、価格の高騰をよそに大手スーパーは“野菜の安売りキャンペーン”を行っています。
イオンは、本州と四国の「ジャスコ」「サティ」約340店舗で、一斉に値下げ販売を行い、ある東京都内のジャスコ店では、キュウリ(1本)38円、タマネギ(1個)48円、キャベツ(2分の1カット)158円、ぶなしめじ(1袋)78円などです。
イトーヨーカドーでも「高値野菜を最大6割安で一斉大放出」として、12品目を全国一斉164店舗で販売しました。報道によると、開店前から100人以上の行列ができる店もあり、消費者をひきつけています。
大手スーパー側は、「野菜は契約農家からかき集めた」「安い産地から大量購入した」などと言いますが、市場関係者からは「納入業者に腹を切らせているのではないか」との声も聞かれます。
|
大手スーパーの野菜安売りコーナー(東京都内) |
こうした大手スーパーの安売りに対して中小の流通業者は、「東海地方のある中堅スーパーでは1玉300円で仕入れたキャベツを自腹を切って98円で売って対抗している」(仲卸業者)など、競争のあおりを受けています。
大手スーパーの“安売りキャンペーン”は、自分では痛みを負わずに消費者の味方をアピールし、一方では流通を混乱させて仲卸・中小スーパーに負担を押し付け、そのしわ寄せを生産者にかぶせている―こんな構図が見えてきます。
(新聞「農民」2010.5.3付)
|