千葉 佐原農産物供給センター
「環境保全型農業」で大臣賞
温暖な気候と水はけのよい火山灰土の台地が広がる千葉県香取市九美上(くみあげ)。農産物づくりに恵まれた環境の下で、一貫して自然環境を重視した農業に取り組んでいる農人組合法人佐原農産物供給センター(仲橋正廣代表理事、農民連に団体加盟)は、このたび第15回環境保全型農業推進コンクールで大賞(農林水産大臣賞)を受賞しました。
(勝又真史)
「食の安全」「環境」にこだわって
有機質たい肥、緑肥の土づくり
取扱青果は80種類に
佐原センターは1981年、農業青年6人で設立され、生協に鶏卵と青果の出荷をしたのが始まりでした。当初から、「食の安全」と「環境」へのこだわり、顔の見える「産直」を背景に販路と組織を拡大し、現在は茨城県の生産者を含む会員147人の組織に発展、取扱野菜・果物は44品目(80種類)にのぼります。
販売先は、多くを生協が占め、地元の学校給食、量販店のほか、3月27日にオープンした道の駅の直売所も新たに加わりました。
佐原センターは設立当初から、土壌診断に基づいた施肥設計や有機質たい肥の投入、緑肥を入れた土づくりなどに積極的に取り組んでいます。さらに生産者自身による内部監査委員会、消費者、学識経験者による公開監査などにより、生産履歴の確認や情報公開を自主的に行っています。
農産物の残留農薬検査は、農民連食品分析センターに依頼し、食の安全・安心を確かなものにしています。農薬・化学肥料の削減について、飯田卓さん(49)は「除草剤を使わないので、草取りは手作業で大変ですが、安全な野菜を消費者に届けるのは私たちの喜びです」と話し、根本芳和さん(49)も「センターでは初めから栽培の記録に取り組んできました。農薬を使えないのは手間がかかりますが、農法でもほかの産地をリードする気概で取り組んでいます」と胸を張ります。
佐原センター常務理事の香取政典さんは「農産物の管理を作付計画から出荷までシステム化することで、農産物の安定供給と生産者の技術・意識の向上を図ることができるのです」と語り、消費者のためだけでなく、生産者自身のためだと強調します。
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佐原センター交流・調理施設「らくちーな」の前で。(前列左から)香取さん、根本さん、仲橋さん。(後列左から)佐藤さん、鎌形さん、飯田さん |
消費者との交流や
食育への活動も盛ん
体験学習や料理教室
佐原センターが評価されたのは、環境保全型農業に加えて、消費者との交流や食育への取り組みが盛んなことです。産地に消費者を招いての交流には、年間30回、約1000人が参加し、畑で楽しむ収穫祭、料理教室などを開いています。鎌形武さん(52)は「消費者に親子で畑に来てもらい、種まきから収穫まで一緒に体験するのは、お互いに楽しいですね」と交流を楽しんでいます。
佐原センターは、地元の小中学校の体験学習を受け入れ、地域の食育も重視しています。佐藤正浩さん(49)は「売って終わりでなく、消費者の声が返ってくるので、やりがいがあります。農業体験で、農家の苦労を少しでもわかってもらえれば」と語ります。
農家のお母ちゃんたちでつくる「農め〜くくらぶ」は料理教室などを通じて、農家が消費者の目線で農業を取り組むのに役立つ情報を発信しています。20から30代の農業青年でつくる「若造くらぶ」は、休耕地の開発事業や近郊・遠方産地との交流・視察を通じて、技術の向上に努めています。
仲橋代表は、今後の課題として「新規就農者の受け入れなど、後継者対策には特に力を入れます。食品残さのたい肥化を充実させ、遊休農地を活用した生産を通じて、環境保全型農業をさらに発展させたい」と、受賞を機に展望しています。
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センター祭で楽しい子どもたちとの交流=2009年11月3日 |
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同コンクールでは、紀ノ川農業協同組合(和歌山県紀の川市・農民連加盟)も大賞を受賞しました。(紀ノ川農協の取り組みは、本紙2009年5月25日付で詳しく紹介しています)
(新聞「農民」2010.4.12付)
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