備蓄米買入で米価下落 重大な失政!
米需給と価格への責任放棄
農民連食健連 米価下落問題で農水省交渉
農民連と全国食健連(国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会)は3月26日、米価下落、米戸別所得補償モデル事業(モデル事業)などの問題で農水省と交渉しました。
下落は4%程度“たいしたことない”
政府の開き直り発言に厳しく抗議
4項目の緊急対策を申入れ
冒頭、農民連の白石淳一会長が「4月からモデル事業が実施されるが、現場では不安が広がっている。大きな原因は米価の下落だ」と指摘。(1)米価下落に歯止めをかけ、価格と需給を安定させるために緊急対策を講ずる(2)「米戸別所得補償モデル事業」の補償水準1万3703円を引き上げ、「水田利活用自給力向上事業」の交付単価を最低限、従前の水準に戻す(3)日豪EPA交渉を中止する(4)ミニマムアクセス(MA)米について、最低限主食用のSBS米や需要のないものは輸入を削減・中止する―などの4項目を申し入れました。
1万2900円台の安値で… 最初に、5カ月連続で安値を更新し、過去最低水準にまで米価が落ち込み、業者が安定的な取引ができないほど流通が混乱している現状を示し、「需給指針を見直す『食料・農業・農村政策審議会食糧部会』(3月30日開催)でなぜ米を議題にしないのか」と追及しました。
農水省は「下落は4%程度で需給指針の見直しは必要ないので議題にしない」と現実を無視した答弁。農民連は「需要予測が狂ったとき、政府は責任を取るのか」と迫り、「議題にすべきだ」と強く要求しました。
政府みずから先安感を発信
次に、16万トンの備蓄米買い入れを実施したことについて、「1万2900円台の安値で買いたたいたため市場に“先安感”のシグナルを発信した」「政府の買い入れが価格下落を招いたことは重大な失政だ」と批判しました。
農水省が買入価格について「政府に売り渡せばすぐに金になり、保管料もかからない。売り渡した方が得と判断したのだろう」と開き直ったのに対し、参加者はきびしく抗議しました。
また農民連は、現在の需給や価格の実態に目をそむけたまま、モデル事業を実施すれば、大手卸売業者などから農家への助成金を前提にした“価格破壊”や“買いたたき”は必至だと述べ、「このままでは米価はさらに下落する」と主張しました。
農水省は「買いたたきはしないように業界にお願いしている。不当な圧力があった場合には独占禁止法の優越的地位の乱用を適用して取り締まる」と責任逃れの答弁。農民連は「国がみずから生産費を大幅に下回る価格で入札すること自体、『不当な圧力』で独禁法違反だ」と告発しました。
モデル事業の標準的生産費について「政府が発表した08年産米の生産費と3000円近くも差がある。標準的生産費を実際の生産費に合わせるべきだ」と追及しました。
農水省が「税金で満額補償すると、ばらまきだと批判を受ける」と答弁。新日本婦人の会の代表が「生活できない米価では、農業を継ぐ人がいなくなる。消費者も農業を守ることが、命と子どもを守ることだと思っている」と農水省の姿勢を厳しく批判しました。
MA米をハイチ救援の方向へ
MA米の輸入中止について、農水省は拒否しましたが、ハイチなどに地震災害救援米として活用するよう求めたのに対し、「その方向で考えている」と答えました。
(新聞「農民」2010.4.12付)
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