どうなる米の生産と流通
現場からのレポート
生消研がシンポジウム開く
農業の問題は
生産者以上に消費者の問題だ
食糧の生産と消費を結ぶ研究会(生消研、木村友一会長)は3月13日、東京・新宿農協会館で第36回食糧の生産と消費を考えるシンポジウム「どうなる米の生産と流通〜現場からのレポート」を開き、生産者や消費者、研究者など約70人が参加しました。
現場からのリポート―▽山形・庄内産直センターの菅井巌さん「いま生産現場では」、▽全農パールライス東日本の北原満昭部長「米の流通と価格の現状」、▽東京消費者団体連絡センターの矢野洋子事務局長「米の消費拡大にむけて―消費者の課題とメッセージ」―を受けて、岩手大学の横山英信教授が「産直運動の推進に向けて―米をめぐる日本農業のゆくえ」と題して、基調講演を行いました。
このなかで、庄内産直センターの菅井さんは、農業と地域経済が近年急速に衰退していることや、戸別所得補償モデル事業に農家の“期待はずれ”の声が広がっていることを紹介。そして昨年8月に「黙っていられない」と広範な呼びかけ人が賛同して“怒りの集会”を開いたことや、「国民の胃袋を取り戻す運動」として神奈川の保育園や東京の小中学校の学校給食に、庄内の米を届けている取り組みを報告しました。
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発言する庄内産直センターの菅井さん(左から2人目)。そのとなりから全農の北原さん、消費者団体連絡センターの矢野さん、岩手大の横山さん |
全農の北原さんは、米の消費量が落ち込む中で、「全農の集荷率が流通量の50%を下回り、販売量は前年の62%、契約数量も50%と低迷している。さらに、政府米備蓄100万トンのほかに民間備蓄が40万トン以上になると見込まれ、ダブつき感のなかで米価が上がる要因はない」と、厳しい状況を報告しました。
東京消費者団体連絡センターの矢野さんは、食育の取り組みや東京の農業・農地を生かした町づくりが進んでいることを紹介し、「生産者は消費者の健康を守り、消費者が生産者の経営を守る。そんな関係が大事」と結びました。
横山教授は、政権交代のもとでの米政策(戸別所得補償モデル事業)と今後の展望について詳しく解説し、岩手県内で進んでいる産直推進運動の課題などについて報告しました。そして、「輸入がストップするなど食糧事情に不安が生じた場合、自分で食糧を生産できない都会の人たちはどうするのだろう」という農業青年の発言を紹介し、憲法25条の生存権と農業のかかわりから「農業の問題は、生産者以上に消費者の問題ではないか」と投げかけました。
その後、参加者から、輸入自由化と戸別所得補償との関係や米の流通・販売の動向などについて質問や意見が出され、活発なディスカッションが行われました。
(新聞「農民」2010.4.5付)
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