「農民」記事データベース20100405-919-07

シリーズ
COP10(第10回生物多様性条約締約国会議)
MOP5(第5回カルタヘナ議定書締約国会議)
に向けて

関連/MOP5の争点と課題


GM作物は生物多様性を壊す

市民団体が専門家招き学習会

画像 遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンは3月10日、10月に名古屋市で開催されるCOP10・MOP5に向けた4回目の学習会を東京都内で行いました。

 開会あいさつした同キャンペーンの天笠啓祐代表は、生物多様性条約とカルタヘナ議定書について詳しく説明。「遺伝子組み換え作物などバイオテクノロジーによって改変された生物(LMO)は、生物多様性の保全や持続可能な利用に悪影響を及ぼす危険性があるために取り扱いを特別にし、とくに国境間の移動に対して規制を求めたのが同議定書だ」と要点を整理しました。

 また「国境を越えた遺伝子組み換え(GM)生物の移動により生じた損害について、責任と救済を定めた『責任と修復』条項(同議定書27条)の取り扱いをどうするかが争点の一つだ」と強調しました。

 さらに中国がGM稲を承認し、モンサント社がGM小麦の開発を再開するなど新しい動きを紹介。「除草剤をまいても枯れない作物が、除草剤に強い雑草を増やし、農薬使用量を増やすなど、GM作物が生物多様性を破壊している」と指摘したうえで、「有機農業、環境保全型農業が生物多様性を守る」と力説しました。

 ワシントン州立大学名誉教授で遺伝子工学が専門のフィル・ベレアーノさんが「MOP5の争点と課題」について講演(別項)。続いて日本消費者連盟の真下俊樹さんが、2月にマレーシア・クアラルンプールで開かれた「責任と修復」共同議長会合について報告し、「『責任と修復』というのは、製品の欠陥によって損害を与えた場合、たとえ製造者に過失がなくても損害賠償の責任を課すという製造物責任の原則をLMOについても適用するものだ」と指摘しました。

 今回の会議で途上国側が、国内法でLMO固有の民事賠償制度を設ける旨の規定を議定書に盛り込むよう主張していたのに対し、草案では「国内法で特別な制度をつくってもいいが、つくらなくてもいい」という規定になり、大幅な後退を強いられたと告発しました。


MOP5の争点と課題

カルタヘナ議定書の「責任と修復」について

ワシントン州立大学名誉教授 フィル・ベレアーノさんの講演

画像 私が疑問に思うのは、日本には新しい食品の認可制度、安全性のチェック制度があるのに、このチェックがGMOでは機能していないことです。

 モンサントのようなバイテク企業は、国の食品安全審査機関では「GMOは、普通の食品と変わらないから、安全性のチェックはいらない」(実質的同等性)と主張しています。しかし一方で、同じバイテク企業が、特許局では、特許を得たいがために「従来の食品とはまったく違う新しい食品」だと主張しているのです。

 また、バイテク企業は「GMOで収量が増え、栄養価が高まり、世界の飢餓が救える」と主張しますが、これまで収量増、栄養増強を目的に開発されたGMOはありません。逆に収量は落ちているのが現状です。

 さらに問題なのは、新たなGM食品の認可は、すべて企業が提出したデータと解釈にもとづいて行われていることです。独立の立場にある科学者の研究では、GMOが健康や環境に害を及ぼす可能性があるという結果も出ています。実際に、GMOが損害を出した事件はすでに数百件、損害額は数十億ドルにものぼっています。

 このため、カルタヘナ議定書のなかに法的拘束力のある民事責任制度をつくり、被害を受けた締約国を救済する交渉が行われています。貧しい国にとって、民事責任を国際制度として確立することは重要です。なぜなら、(1)行政機構の体制が未整備、(2)政府に汚職が多い、(3)輸出・輸送企業が弱小で賠償能力がない―場合があるからです。

 輸出国は、リスク評価をしないでGMOを輸出しているため、この制度は日本のような輸入国には必要です。それなのに、日本は、民事責任制度の確立に強硬に反対している国の一つです。理由は「日本の国内法にそぐわないから」と主張しています。その一方で、日本には「製造物責任法」のような法律があり、企業の責任を追及する制度があります。

 日本ではいま、トヨタが製品の欠陥を問われているのに、モンサントは責任を問われなくていいのでしょうか。日本政府は、抵抗をやめて、国際的な民事責任制度づくりに協力すべきです。

(新聞「農民」2010.4.5付)
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2010年4月

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