飼料用米いかす日本型循環畜産実践交流会開く
エサ米栽培は食用米と違う
農家の頭の切り換えが必要
需給調整が急務
「助成」の拡充・安定を
「飼料用米を活(い)かす日本型循環畜産実践交流会」が3月12日、東京都内で開かれ、全国の農協、地方自治体、食品や飼料メーカー、消費者団体などの関係者350人が参加しました。集会では、養鶏を中心に飼料米活用の実践が報告されるとともに、長期的な支援を求める声が相次ぎました。
集会では、多収品種を中心に飼料用稲の活用を進めている東京農業大学の信岡誠治准教授が基調講演しました。信岡さんは「飼料米普及のカギはコスト削減。水田で作るのは食用米と同じでも、栽培方法はまったく違う。食用米とは別の新しい穀物と考えるべき。いかに農家が頭を切り替えて、生産コストを削減した栽培をできるかが重要だ」と強調し、たい肥を大量投入するなど超多収飼料米の栽培技術を具体的に紹介しました。
メリットは大きい
取り組み事例の発表では、超多収飼料米の栽培に取り組んでいる米・野菜農家の矢野匡則さん(香川県)が報告。矢野さんは、地域に合った栽培マニュアルが整備されていないなかで、試行錯誤しながらも1年目と2年目が1トン以上、3年目も800キロ(10アールあたり、モミ換算)収穫できた経験を話し、「野菜の輪作障害にも有効で、新たな機械投資をせずに作れるなど飼料米栽培のメリットは大きい。今後の課題としては、耕作農家が食用米と同等の所得が得られるよう、助成制度を拡充・安定させる必要がある」と述べました。
三重県の養鶏農家の鈴木明久さんは、飼料米を採卵鶏に給与した経験を報告しました。鈴木さんは、「鶏がよく食べる」「モミのまま給与することで、鶏の筋(きん)胃(い)や腸を大きく丈夫にする」「鶏ふんがにおわず、良質なたい肥ができる」など、飼料米が採卵鶏の飼料として非常に優れていることを紹介。「個々の養鶏農家の努力だけでなく、国として支援すべき」と訴えるとともに、長く減反政策が続いたことで農家の生産意欲が傷つけられ、耕作農家によって飼料米の品質に差があることに触れて、「耕作農家と需要先である畜産農家の信頼関係が重要」と述べました。
食品・飼料メーカーの昭和産業の担当者は、飼料米の集荷、加工・流通について報告し、「今年度は、水田利活用自給力向上事業で10アールあたり8万円の助成が行われるので、大幅な増産が予想されるが、耕作農家からの集荷・計量には非常に手間と経費がかかり、支援が欲しい」と述べました。
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集会に先だって、飼料米を給与した鶏肉、卵、牛乳の試食会が開催され、「臭みがない」「うまみが濃い」と大好評でした。 |
農水省担当者に怒り
パネルディスカッションには、農水省生産局の担当者もパネリストとして登壇しましたが、「お聞きしたご意見は、副大臣に伝える」と何度も発言。会場の農家から「現場では耕作農家と畜産農家、その先の畜産物の販売先など、需給のマッチングにたいへん苦労している。この需給調整が未整備の状況で、急速に戸別所得補償で増産しても、飼料米が一過性の取り組みに終わりかねない。8万円の助成の先行きも心配だ。“副大臣に伝えます”だけでなく、行政の担当者として体を張って必要な価格支持や体制作りを行ってほしい」と批判の声が上がり、会場から大きな拍手がわき起こりました。
(新聞「農民」2010.3.29付)
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