自家のもち作りで
地域活性化に一役
広島県尾道市御調(みつぎ)町の源田敏雄さん(76)は、自ら栽培した米で餅(もち)を作り、村の活性化に一役かっています。集落の信頼も厚い農民連会員の源田さんは、きょうも餅づくりに励み、地域を走り回っています。
(勝又真史)
「“もち”続けよう!憲法9条」焼き付け
平餅、豆餅、よもぎ餅、しゃぶしゃぶ餅……。源田さんが営む店「みつぎフーズ」には、自作の餅をはじめ、あん餅、かしわ餅などの和菓子が並びます。餅は、道の駅、県内の特産品販売店に出荷されるほか、集落の朝市、お祭り、お祝い、上棟式の注文にも応じます。
店内に設けられた加工所で餅づくり。「“もち”続けよう! 憲法9条」の焼き付けが入った9条餅は、9条の会など、反戦平和のイベントに引っ張りだこです。
“荒れた田なくす”使命に燃え
集落の半分の田で
原料となるもち米は、すべて自家栽培です。源田さんは、16年前に大手の機械製作会社を定年退職後、作り手がいない田んぼの現状をみて、米作りを決意。「米作りをしていない時期には餅を作ろう」と始めました。
源田さんが住む旧御調町の綾目地区は農業人口も農家戸数も40年前に比べて半数以下に激減。綾目地区の上小山田集落は現在、生活している家が16軒。そのうち7軒が80歳を超えた一人暮らし世帯です。
耕し手がいなくなった田んぼは荒れ放題。ふるさとの農業を守ろうという農民連会員としての使命に燃える源田さんは、高齢化で農作業ができない田んぼを引き受け、「地域を荒らしてはいけない」と、徐々に面積を広げてきました。今では集落全体で7ヘクタールの田んぼのうち、半分近くの約3ヘクタールに。そのうち2ヘクタールでもち米、20アールで古代米を作り、残りは自家消費や縁故米用のコシヒカリです。稲は作付けしてから刈り取るまで、ほとんど手を加えず、「私の米は毒がありません」と笑います。
|
尾道市内の道の駅「クロスロードみつぎ」には源田さんの餅が並びます(手前) |
なくてはならん人
学校や農協支所が統廃合でなくなり、後継者もいないなかで、上小山田集落の5戸の農家は、相談し合って田んぼを管理し、地域をどう活性化させるか話し合っています。集落の将来を憂える源田さんは、町に出ている集落出身の若者たちに、今のふるさとの現状を伝え、将来の生活設計を問う手紙を出すなど、後継者対策にも乗り出しています。
同じ集落で水稲農家の広安義已さん(78)は「地域のために何かしようといつも一生懸命。朝から晩まで一人で走り回り、なくてはならん人です。わしらのふるさとに夢が持てるよう協力したい」と、源田さんに期待を寄せます。
「農業法人を立ち上げて田んぼを守っていくとともに、豊かな自然と環境を生かした町・村づくりが求められています」と力を込める源田さんの餅には「田んぼを守り、集落を活性化させよう」との願いがいっぱい詰まっています。
(新聞「農民」2010.3.22付)
|