「農民」記事データベース20100315-916-08

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“任意調査”拒否すると
罰金50万円?!


「改正」案で罰則強化ねらう

 いま、国会で審議されている「所得税法等の一部を改正する法律案」は、財源確保のために扶養控除などの人的控除を縮減する庶民イジメの悪法ですが、それだけではありません。

 納税者の協力のもと

 所得税法242条では、「第234条第1項(当該職員の質問検査権)の規定による当該職員の質問に対して答弁せず若しくは偽りの答弁をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ若しくは忌避した者」について、「1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する」と定めていますが、この「20万円」を「50万円」に引き上げ、税務調査を拒んだり避けたりした場合の罰則も強化しようとしています。

 一方で税務調査は、納税者のプライバシーを侵害し精神的な負担なども大きいため、国税庁が定める「税務運営方針」でも「税務調査は、その公益的必要性と納税者の私的利益の保護との衡量において社会通念上相当と認められる範囲内で、納税者の理解と協力を得て行うもの」としています。

 裁判所の令状による「強制調査」と区別して「任意調査」でなければならない性質の調査について「罰則」が定められていること自体、大きな矛盾です。国税庁もそのことを意識しているのか、これまで調査拒否に対して「罰則」が適用されたという例はまずありません。かといって放置するわけではなく、調査拒否とみなせば推計で「課税」をする、つまり「罰金」ではなく「税金」をとるというのがこれまでの対応でした。

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「3・13重税反対統一行動」の事前の宣伝行動が、3月5日、東京・有楽町で行われ、農民連も参加して道行く人々に400本の切り花とチラシを配布しました。

 税務署の横暴に拍車

 その調査がどのような「公益的必要性」があるのかを確認したうえで、どこまで協力することが「社会通念上相当と認められる範囲内」なのかについて、主権者である「納税者」が「理解」してはじめて「協力」できるのが税務調査だということになります。

 ところが実際には、「調査理由を聞いて納得して協力したい」「調査は立会人と一緒に受けたい」などの納税者の当然の要求を調査拒否とみなして、一方的な推計課税で更正処分するなど、申告納税制度の原則を踏みにじる強権的な調査・課税がたびたび行われてきました。罰則強化は税務署の横暴に拍車をかけることになりかねません。

 憲章制定はどこへ

 民主党は総選挙のマニフェストで「納税者権利憲章の制定」を掲げていましたが、本当に納税者の権利を守る立場に立つなら、罰則の強化どころか、234条にもとづく調査については罰則をなくして純粋な「任意調査」とすることこそ求められています。
(農民連税対部 村田深)

(新聞「農民」2010.3.15付)
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2010年3月

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