備蓄米16万トン買い入れたが
米価はさらに下落へ
米モデル事業の成否に影響
鳩山政権が初めて実施した備蓄米買い入れは、4回目(2月25日)の入札を経てようやく予定の16万トンに達しました。しかし、買い入れ数量の少なさに加えて、政府自ら買いたたきに走る姿勢に、流通はますます不安定化し、価格はいっそう下落する様相です。
業者は泣く泣く安値で…
政府は「価格に影響を与える備蓄米買い入れはしない」として、全国一本の予定価格を設定(非公表)し、それを下回る安い米から順に落札する方式で入札を実施。予定価格は市場価格を大きく下回る1万2950円前後の設定と見られ、1回目の落札はゼロ。あまりの安さに関係者の間に衝撃が走りました。しかし、政府自ら安値を誘導するようでは、「この先、米価はさらに下がる」と判断し、業者は泣く泣く売り渡しに応じたものと思われます。
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“米の価格と需給の安定をはかれ”と農水省に強く要請する農民連・食健連の代表(2月12日) |
安定的取引がますます困難に
今、関係者が最も頭を痛めているのは、米価下落に加えて先行きの不透明さから長期の契約取引ができず、「当座買いにならざるをえない」ことです。
全農も、卸業者などとの相対取引の契約は、対前年比で50%程度の進ちょくと言われています。取引の不安定化は産地と卸の間だけでなく、卸と小売りや実儒者との間も同じで、米価下落と「いつ他の業者に取引先を奪われるかわからない」という不安の中で、仕入れや販売を余儀なくされています。「一年一作」という主食の米が、このような不安定な流通でどうして自給率の向上がはかれるでしょうか。
政府は「米戸別所得補償モデル事業が始まれば米価は下落しない」と繰り返すばかりで、現実の需給や価格の実態に目をそむけています。このままモデル事業を始めれば、農家への助成金を前提にした“価格破壊”や“買いたたき”は必至で、米価は更に「下落」に向わざるを得ません。
あと30万トンで需給は均衡
09年度の過剰は40数万トンといわれ、国民消費量のわずか5%程度。今回16万トンの買い入れたので、あと30万トン程度の追加的買い入れをすれば需給は十分均衡します。
100万トンに達した備蓄米の中身には、主食に回すべきでない超古米などがあり、これ等を主食以外に回し、30万トン規模の追加的買い入れをするべきです。その際、業者が処理に困っている08年産も買い入れ対象に含めるべきです。また、主食用や需要のないミニマム・アクセス米の輸入は中止し、300万トン棚上げ備蓄も公約どおり実行すべきです。
米戸別所得補償モデル事業の大前提として、「政府はただちに米の価格と需給の安定をはかれ」の声を、大きく広げることが求められています。
(農民連ふるさとネトワーク 横山昭三)
(新聞「農民」2010.3.15付)
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