「農民」記事データベース20100315-916-01

生協産直に新たな光

生産者 消費者 相互理解が支える活動

農民連ふるさとネットワーク
生協産直研修会

 農民連ふるさとネットワークは2月26日、東京都内で「生協産直研修会」を開催しました。05年の「情報交流会」以来5年ぶりとなった研修会には、全国25の産直組織などから60人あまりが参加しました。


安全・安心だけでなく
地産地消・環境保全も促進

 生協運動の中に新しい動きが…

 農民連ふるさとネットワーク副代表の山口一郎さん(埼玉産直センター)は開会あいさつで「一時期、生協運動の中には低価格競争を勝ちぬくために農産物の輸入自由化を求める声が強まったが、最近では『地産地消』に関心が高まり、産直運動にも新たな光が当てられている。こうした新しい動きに対応するために、生産者側の課題を明らかにして、生協産直を発展させよう」と述べました。

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5年ぶりの研修会に全国から60人あまりが参加

 商品企画も生産者団体と協議して

 続いて、大規模で先駆的な産直運動をすすめている3つの生協(事業連合)とそこに出荷している生産者組織から、それぞれの活動が報告されました。

 第1報告では、関東信越1都7県の生協で構成する「コープネット事業連合」の新(しん)智彦さん(商品業務管理部企画担当課長)と、コープネットに農産物を出荷する「関東信越産直団体協議会」の奥貫定男さん(産直ネットワークいばらき)が発言しました。新さんは「コープネットは事業エリア内での『地産地消』を重視している」と述べ、6カ所に配置した集品センターに近くの産地から農産品を集めることで新鮮さに対する組合員の要求にこたえていること、商品企画も生産者団体と協議しながらすすめていることなどを紹介しました。

 奥貫さんは、産地側がコープネットのこうした方針を歓迎し供給拡大をめざす一方、小規模な産地が集品センターを拠点とした流通に対応するには、計画的な生産や輸送手段の確保など、解決すべき課題が多い実情も報告しました。

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新 智彦さん

 第2報告では、東北6県の7生協でつくる「サンネット事業連合」の菅原桂さん(生鮮統括マネージャー)と「産直センターふくしま」理事長の阿部哲也さんが発言。菅原さんは「産直は相互理解が支える活動だ」と強調し、企画に工夫を凝らした「産地交流ツアー」の取り組みを紹介しました。また、長崎のみかん産地との産直では、三陸地方で処理に困っている「カキの殻」を土壌改良材として供給していることも紹介。「環境保全への取り組みが組合員に評価され、みかんの扱い数量が倍増した」との発言に注目が集まりました。

 阿部さんは「サンネットとの産直協定締結で販路拡大の願いが実現した」と述べ、新婦人産直で培った交流活動のノウハウが生協との産直にも役立っていることを報告しました。

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菅原 桂さん

 第3報告は、東京の単位生協「東都生協」常務理事の風間与司治さんと、熊本の「大矢野有機農産物供給センター」理事長の小林辰雄さん。風間さんは「産直は生産―流通―消費のあり方を見直していく運動で、革新性が必要」と提起し、「産地との交流を通じて組合員の農業に対する理解を深め、自給率の向上にも貢献したい」と述べました。

 小林さんは、柑橘類を中心とする産直活動を紹介。「東都生協は、余剰農産物を引き取る『サポート制度』をつくったり、『土づくり基金』を創設してボカシ肥料の工場に融資するなど、さまざまな応援策で小規模な農家の経営を支えてくれる」と感謝を込めて報告しました。

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風間与司治さん

 新しい豊かさを見出していく

 質疑応答では、生産者側から「生協は産直農産物の品質や価値をどのように評価するのか」「産地との交流はほんとうに農業理解に役立っているのか」などの率直な質問が出されました。

 生協側からは、品質について「安全・安心な商品を求めるだけの時代は終わった。それを前提に、生産者と消費者が新しい豊かさを見出していくことが大切」(菅原さん)、「点検表をクリアすればいいというものではない。消費者の要求を伝える努力もしたい」(新さん)などの返答がありました。また、産地での交流会を生きたものにするためには、「消費者を『お客さん扱い』しないことが重要」と共通して語られたほか、「初心者向けの農作業体験から本格的な討論まで、目的や参加者に応じて多様な企画を考える」(風間さん)、「生協職員が産地の思いを伝えることも大切」(新さん)などの意見も出されました。

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なごやかな雰囲気のなかで率直な意見交換がおこなわれた

 共通の目標に向かっていく運動

 この研修会を企画したふるさとネットワーク副代表の松本和宏さん(紀ノ川農協)は、「貴重な経験がたくさん紹介された。これからの産直活動が単なる商品の取引を超えて、環境保全や持続可能な農業など、生産者と消費者の共通の目標に向かっていく運動になることを示す新鮮な内容になった」と振り返っていました。

(新聞「農民」2010.3.15付)
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2010年3月

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