事業費なんと63%も削減
土地改良 これでは営農できない
生産拡大へ必要な事業の拡充を
来年度からスタートする米戸別所得補償モデル事業と水田利活用自給力向上事業。その予算額は約5618億円ですが、このうち増額分の3694億円は、土地改良事業費を3643億円削ってあてられた――民主党の小沢一郎幹事長の「鶴の一声」でバッサリ削られた来年度の土地改良事業費は、今年度の予算額5772億円からなんと約63%削減の2129億円に。「だめだ。(土地改良政治連盟の)政治的態度が悪い。そんな所に予算をつけるわけにはいかない」(小沢幹事長、朝日新聞2月1日付)――こんな党利党略で土地改良予算が削られた結果、各地で事業が突然中断したり、計画の変更を余儀なくされています。
北海道
事業できず作物も作れず八方ふさがりの状況に
北海道の水田地帯、美唄市や岩見沢市で、土地改良をめぐって農家の中に困惑が広がっています。
ことの発端は、来年度予算編成で土地改良事業の予算が大幅に削減されたこと。これによって、来年度に予定していた事業が半分しか行えない事態となりました。
180ヘクタールの土地改良を予定している道営基盤整備事業・峰岩地区では、5年計画のうち1年目の工事が終わり、2年目の工事に向け、作付けをとりやめて6月からの工事実施に備えていました。
ところが、事業予算の削減で半分近くの予定地で事業実施が困難となり、作付けの準備もされていないことから、計画から除外された農家は、事業もできず作物も作れない八方ふさがりの状況に追い込まれています。
同事業の期成会は「土地改良事業は、作物を安定的に生産できるようにするための基盤であり、事業実施が結果的には自給率向上にも結びつく」として、事業の予算確保とともに、作付けの準備がされてない農家への緊急の対策を求めて、農民連とも協力しながら運動を進めています。
突然の削減で大混乱に国の責任で対策実施を
期成会に所属する農民連会長の白石淳一さん 土地改良事業は、自公政権のもとで党利党略的な手段として使われてきた面もありましたが、用排水の整備や維持管理、暗きょ等の土地改良事業は農業生産にとって欠くことのできないものです。しかも、一度整備すれば終わりというものではなく、農業を続けている以上繰り返し行うことが必要なものです。
それだけに、該当地区では周到な準備のもとに事業が進められており、突然の事業予算の削減は大きな混乱をもたらします。少なくとも、営農が継続できないような事態は避けなければなりません。国の責任で対策の実施を強く求めたい。
茨 城
要望した排水路整備事業の予算が削られ、断念
茨城県南部の取手市とつくばみらい市にまたがる福岡堰(ぜき)土地改良区では、すでにほ場や用水路の整備は完了していましたが、「減反が未達成」という理由で排水路の整備が遅れていました。そのため、アシが繁茂し泥がたい積して暗きょ排水が進まず、田んぼの水はけが悪くてトラクターが入れないなど支障が出ていました。
そこで昨年10月、排水路の改修を求めて、地権者の同意書を添え採択条件もクリアして要望書を県に提出しました。その際、「予算は大丈夫か」との質問に、「それとこれとは別。大丈夫」との回答でした。
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アシが生い茂る排水路。―「ここをはやく改修してほしい」と訴える大林さん |
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道路1本へだてて整備された排水路があります |
しかし、昨年暮れ、県から突然連絡があり、「新規の事業には予算がつかないことになった。何年後に事業ができるか、わからない」との回答で、土地改良区の要望は取り下げられ、関係者はガッカリしています。
この機会に改良区つぶしがねらいか
福岡堰土地改良区の総代で、茨城県農民連・県南農民組合副組合長の大林博さん 土地改良事業の予算が削減されたのには裏があるようです。
土地改良区といえば、これまで自民党と深いかかわりを持ってきた組織です。2年前に土地改良区の総代に選ばれた時、土地改良区の事務局長から「自民党員になってくれ」と言われて驚きました。自民党の人から誘われるならまだしも、土地改良区という公の機関の人から誘われたので、私は即座に断りました。また、総代会の時には、自民党の代議士の到着が遅れたために、開会を遅らせたということもありました。民主党の小沢幹事長は、この機会に自民党の地盤をつぶそうとの魂胆のようですが、そのために善良な農民にシワ寄せされたのでは、迷惑この上なしです。
滋 賀
必要な事業に農水予算の増額を望む
滋賀県大津市にある真野北部土地改良区理事長の谷茂夫さん 2月18日に近畿農政局の職員が、民主党政権の「事業仕分け」で土地改良事業の予算が大幅に減ったことや、来年度からはじまる米戸別所得補償モデル事業などについて説明に来ました。なんとも意気込みが感じられません。
土地改良事業の説明では「予算が大幅に削られてたいへんだ」ということでしたが、この土地改良区でも農道整備関連の予算が削られ、来年度の実施が困難になっています。
また、近畿農政局はこれまで、土地改良区が多すぎるので合併を進めるよう盛んに言っていたのですが、今回は「数や規模ではなく、小さくてもよくやっているところもある。運営のしかたが問題だ」というわけです。これまでの態度と大きく変わったのには驚きました。
今後、どのような影響が出てくるのか心配していますが、ほ場整備とその維持管理は農業生産にとって欠かせない事業です。農水予算の増額を強く望みます。
(新聞「農民」2010.3.8付)
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