地域住民・農家の交流
憩いの場として発展
地域デイケア施設「おにっこハウス」
埼玉・熊谷
農業と障害者の権利を連携してまもろう
丹精込めて作ったみそがおいしい! いま各地でみそ作りがたけなわです。埼玉県熊谷市の心身障害者地域デイケア施設「おにっこハウス」では、地元の農家が栽培した大豆を使って、安全とおいしさを兼ね備えた「おにっ子味(み)噌(そ)」の仕込み真っ最中です。
丹精込めてみそづくり
「ハンディ(障害)のある人もない人も地域のなかで『一緒に働ける仕事場をつくろう』『気軽に遊びに来られる所をつくろう』と、小さなみそ屋を始めたのがきっかけです」。「おにっこハウス」施設長の尾島茂さんは振り返ります。
1987年に始まった「おにっこハウス」は、今では生活ホームやケアホームも増設され、2006年に特定非営利活動法人の資格を取得。地域福祉活動グループNPO「おにの家」として発展しています。
おにっこハウスの所在地、熊谷市の旧江南町は、米の転作地帯で、県内で最も大豆の生産が盛んな地域です。「地元の大豆のほか、長野県産の米と大麦など良質の原料を使い、大豆は薪でトロトロとゆっくり炊きます。ストーブでこうじの温度も調節し、手作り感にあふれています。大豆と米・麦の配分を好みに応じて変えるなど、お客さんの細かい注文にも応じられます」。みその仕込みで忙しい「おにの家」理事の桜井克男さん(54)は「おにっ子味噌」をアピールします。
最近は、みそづくりが大はやり。大豆トラストに取り組む新日本婦人の会会員からの注文に対して、みそ仕込みセットの提供も多くなっています。
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おいしいみそのために“仕込み真っ最中” |
「喫茶」と「直売」
「おにっこハウス」の喫茶コーナーでは、自家焙煎(ばいせん)コーヒーやケーキ、手作りの日替わりランチなどが提供されます。
調理員として週2日手伝っている中島仲子さん(埼玉農民連理事)は「お年寄りたちが食事をとりながら語り合うなど、地域の人たちの憩いの場になっています」と語ります。
さらに全国の福祉施設や作業所の手作り製品、近所の農家の新鮮野菜・加工品を販売する直売コーナーを併設。農民連会員の栽培する農産物も多く取り扱っています。ネギやニンジンを出荷している田中孝則さん(52)もそのひとり。「出荷時に一緒になった農家と情報交換ができるなど、生産者同士の交流の場になっています。直売コーナーも近隣の農家と相談しながらつくり上げていったもの。地域の零細農家のよりどころとして発展し続けてほしい」と期待を寄せます。
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「おにっこハウス」にネギを出荷している田中さん |
地域の活性化に
「おにっこハウス」の取り組みについて、障害者施設・作業所の全国組織「きょうされん」の安川雄二常任理事は「不況の下、地域のなかで働く場を確立し、ものごとに付加価値をつけることは大事なことです。農業を守ることと障害者の権利を守ることを連携して運動を進めることが求められています」と指摘します。
施設長の尾島さんは今後について「地元との結びつきをさらに強め、農業振興と地域の活性化につなげていきたい」と話しています。
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「手作り感あふれるみそです」と尾島施設長 |
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おにっ子味噌の注文・問い合わせは、TEL・Fax 048(536)1344。
(新聞「農民」2010.3.1付)
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