林業再生には山村を元気に
日本の森林バイオマス利用を進めるには
NPOがシンポジウム開催
NPO法人バイオマス産業社会ネットワークは1月15日、東京都新宿区の早稲田大学大久保キャンパスでシンポジウム「日本の森林バイオマス利用を進めるには〜日本林業復活のための提案〜」を行い、木材自給率が2割程度で輸入材に依存している林業の現状と再生の方策、いま注目されている森林由来バイオマスの可能性について話し合いました。
はじめに各パネリストが報告。岩手・木質バイオマス研究会の伊藤幸男会長は、再生可能なエネルギーとして注目される木質ペレットの需要が高まっている実情を示しながら、樹皮やかんなくずのようなペレット原料の安定供給の必要性など、課題をあげました。その上で「木質バイオマスの持続的な利用は、林業を支える基盤となる山村が元気であってこそできる」と訴えました。
日本木質ペレット協会の熊崎実会長は、ドイツの林業政策に言及し、ドイツは森林面積が日本の半分以下であるにもかかわらず、丸太生産は日本の3・5倍、木質燃料の生産は5倍以上であることを紹介。ドイツは木材の生産性を引き上げるために、森林資源の充実と林道の路網整備をはじめ、生産コスト引き下げに力を注いだ経緯を述べ、「日本の林業は今まで官主導で進められてきたが、今後は現状をつかみ、自分たちで林業全体を管理していくことが大事だ」と強調しました。
林業振興の利益山村に還元せよ
国産材が使われない理由について、森林ジャーナリストの田中淳夫さんは、輸入材使用を進めてきたハウスメーカーの戦略を告発。京都府・日吉町森林組合の湯浅勲参事は、森林所有者の高齢化、後継者のサラリーマン化が進むもとで、森林組合が適正な施業内容を提案し、集約する提案型集約化施業によって、林業が活性化している実践例を報告しました。
パネルディスカッションでは、日本林業の復活の道について討論。田中氏は「木材自給率を上げることも大事だが、林業振興の利益が山村に還元されることも重要。人が山村に住み続けられる施策が必要だ」と提起しました。
(新聞「農民」2010.2.15付)
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