「農民」記事データベース20100215-912-01

「自給率向上に役立たない」の暴言に、
「とんでもない」と抗議の声―

花の生産はいらないのか!

富山 チューリップ球根農家が悲鳴

関連/麦や大豆などと同様の支援あっていいはずだ

 民主党農政の柱、戸別所得補償制度。来年度は米を対象にモデル事業を行い、水田利活用自給力向上事業で麦や大豆など転作作物の生産を支援し、自給率向上をめざすとしています。しかし、こうした対策で農家の経営を守れるのか、農村を再生できるのか、不安と期待はずれの声が急速に広がっています。そんななか、富山県のチューリップ球根生産者は、「民主党に潰(つぶ)される」と悲痛の声をあげています。


“国賊”と言われても 大量輸入されても
耐えて生産続けてきた

 平和であってこそつくり続けられる

画像 富山県農民連の副会長で、県球根農協常務理事の水越久男さんは、90年以上にわたるチューリップ生産の歴史を振り返って、こう言います。「戦争中は、チューリップの生産を守るためにずいぶん苦労した歴史があります。『のんきに花などつくるのは日本人ではない。非国民だ。日本の国に害をあたえる国賊だ』と言われたこともありました。しかし、私たちの先人は絶やすことなく作り続けてきました。私は子どもたちに言うのです。『平和があってこそ、チューリップを作り続けられるのだ』と」。しかしいま、“国賊”と言われても自由化で大量輸入されても、どんな嵐にも耐えながら生産し続けてきたチューリップ球根が、民主党農政によって存亡の危機に直面しています。

 1988年には、牛肉・オレンジの輸入自由化と並んで、チューリップ球根も自由化され、オランダから輸入されるようになり、1球22円していた価格も、近年は14〜15円台を推移しています。以前は300人近くいた生産者が100人余りに激減しました。それでも、生産者は「産地づくり交付金」などを有効に活用して何とか経営を維持してきました。

 ところが、民主党はこれまでの産地づくり対策の助成にあたる水田利活用自給力向上事業を打ち出し、チューリップは10アールあたり1万円の助成。今までの5分の1の助成では経営が成り立ちません。

 農民連の交渉に組合長も同席して

 球根農協は、「助成単価の引き上げ、輸入検疫の強化」など4項目の要望を国や県に行いました。清都和文組合長は、12月9日に行った農民連の農水省交渉にも同席。こうした運動と各地からの強い要望もあって、来年度に限って「激変緩和措置」を講ずることになり、これまでとほぼ同額の交付金が確保されることになりました。

 しかし、ホッとしたのもつかの間、1月14日の農水省北陸ブロック説明会では、山田正彦副大臣が「今回の制度の目的は、自給率の向上だ。(自給率向上に役立たない)チューリップや家庭菜園まで税金を使っていいのか」と発言。これは、2011年度からの本格実施に当たっては、「チューリップは対象外」ということです。

 水越さんは、「山田発言には、関係者からたいへんな抗議の声があがっている。とんでもない話だ。農家といっしょになって民主党農政を変える運動を進めていく。そのためにも、農民連をもっと大きくしていかなければ」と決意しています。


麦や大豆などと同様の支援あっていいはずだ

富山県花卉(かき)球根農協組合長 清都(きよと)和文さん

画像 富山県でのチューリップ球根生産は、大正7年(1918年)から始まり90年以上の歴史があります。もともと水田の裏作として富山の地に深く根付いてきた特産物です。水田を高度に有効活用し、稲作とうまくかみあった作物として、いまも生産をつないでいます。チューリップは、まさしく転作作物として水田利活用の優等生です。

 ところが、民主党農政が打ち出した水田利活用自給力向上事業では、チューリップを園芸作物と同様に「その他作物」として、まったく戦略作物からはずしています。産地としてはたいへんな痛手です。

 チューリップ球根の自給率はわずか25%しかありません。麦や大豆などと同様の支援があってもおかしくありません。国に強く要望していきます。ご支援をお願いします。

(新聞「農民」2010.2.15付)
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2010年2月

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