国連気候変動枠組み条約第15回
締約国会議(COP15)に参加して(中)
熱気あふれた世界のNGO
COP15の開催と並行して、コペンハーゲン市内には多くのNGOや市民が集い、連日、集会やパフォーマンスが繰り広げられました。その中心となったのがクリマフォーラムという巨大会議場です。クリマフォーラムには、会議場や広いロビー、各団体の展示ブースなどがあり、2週間の期間中、環境問題、途上国の貧困や債務問題、農業、遺伝子組み換え、先住民、ジェンダー、原発反対、森林保護など非常に多彩な分野のNGOが、200を超える集会を開催していました。
「国益のぶつかりあい」ばかりが強調されたCOP15の政府交渉とは違い、クリマフォーラムには、「(地球温暖化を引き起こす)社会・経済システムの変革」を求めて連帯する人々の熱気が満ちあふれ、人類の希望がどこにあるかを雄弁に物語っていました。
ビア・カンペシーナも地元デンマークを含む24カ国から100人が集い、「地球の友」、「気候正義ネットワーク」などと共催で、食糧主権やアグロ燃料、工業的畜産をテーマにして、集会とデモ行進を行いました。
社会のシステムを変えよう!
印象的だったのは、クリマフォーラム全体のスローガンにもなっている「気候に正義を!」、「気候ではなく、新自由主義的な社会のシステムを変えよう」という言葉の重さです。
サハラ砂漠の国、チャドの女性農民は「温暖化で砂漠化が進み、牧畜が困難に直面しており、移住を余儀なくされている」と述べ、インドの女性は「毎日4時間かけて、10リットルの水をくみに、山道を往復している」と、映像を使って報告していました。
地球温暖化を引き起こしてきたのは先進国なのに、その被害を一番に受けているのは途上国の人びとです。しかも地球温暖化は、貧富の差の拡大や、地域のコミュニティーや伝統文化の破壊など、複雑な「社会問題」となって人びとを苦しめている、との声が世界中から上がっていました。
また国際交渉では、バイオ燃料やCO2を吸収するという触れ込みで、実は熱帯林を破壊する森林プロジェクト「REDD」など、温暖化防止をビジネスで解決しようという流れが強まっています。これに対しブラジルの農民は、「バイオ燃料用のサトウキビのプランテーションのために、熱帯雨林がどんどん減っており、農場労働者は奴隷労働の状態だ」と述べ、インドネシアの農民は、REDDのプロジェクトによって農民が森から追い出されていることを報告。グローバリゼーションや新自由主義が温暖化を悪化させていることを厳しく告発し、「気候でなく、社会システムを変えよう」と力強く呼びかけていました。
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ビア・カンペシーナの工業的畜産を批判する街頭パフォーマンス。狭い畜舎で多くの家畜を飼い、遺伝子組み換えの飼料に依存した畜産を変えようと、アピールした |
食糧主権こそ「真の解決策」
ビア・カンペシーナの「小農民の持続可能な農業こそ、地球を冷やす」という提案がより深められたことも、大きな前進でした。各国の農民組織が取り組んでいる持続可能な農業の実例を交流し、農民連も土作りや栽培技術の交流に各地で取り組んでいる実例をスライドを使って発言しました。
デンマークは畜産大国。自然を破壊する企業的畜産や多国籍企業の農産物が、安い価格で世界中に輸出され、自然と共存しながら続けられている小農民の農業が破壊されていることを批判するデモ行進も行われ、「食糧主権」の確立こそ、地球温暖化防止への「本当の解決策」だと、大いにアピールしました。
(新聞「農民」2010.1.25付)
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