静岡 伊豆農民組合生しいたけ こだわりの原木栽培国内最大の産地=伊豆地方
静岡県伊豆市周辺では2008年1月、10人のしいたけ栽培農家が農民連・伊豆農民組合に加入。以前からの組合員2人とともに、農民連ふるさとネットワーク東海を通じて、輸入ものに負けない自慢の原木栽培しいたけを出荷しています。
数年かけ丹精込めて育てた![]() 国内に流通しているしいたけの大半は、おがくずなどを用いた「菌床」で栽培されたものです。しかし、味や香りは、「ほだ木」にきのこを発生させる原木栽培が勝ると言われています。 ほだ木に使うのは、ナラやクヌギの木。農家は、山林地主から山ごと木を買い、11月中旬から12月にかけて伐採します。枝葉を枯らせてから1メートルほどに切りそろえ、翌春、菌を植えて山に寝かせます。これを“伏せ込み”といい、1年でいちばん忙しい作業です。 「私たちは山で木を切るときからこだわっています」というのは星谷勝美さん。ほだ木に適した木を選び、伐採して適度に乾燥。しいたけ菌の成長に最適な条件を整え、同時に雑菌の繁殖を抑えます。無農薬で栽培するためにも、この調整が大切だとのことです。 山中の伏せ込み場に1年半ほど伏せておいて、菌がほだ木の全体にまわったら、「ほだ場」に移して立てます。このときの刺激で、キノコが芽を出すとされます。いちど芽が出れば、同じほだ木から3〜4年は収穫できるそうです。菌の種類を使い分けることで、春と秋は山のほだ場で、夏は雨よけのハウスで収穫。ほぼ通年で出荷します。
中国産にも負けない10年ほど前に大きな危機が伊豆地方は、原木栽培しいたけの国内最大の産地。あまり知られていませんが、しいたけ原木栽培の発祥の地でもあり、その歴史は1741年までさかのぼると伝えられます。ところが10年ほど前、大きな危機が訪れます。中国から大量の干ししいたけが流入し、価格が暴落。生産者の出荷価格は2分の1から3分の1になり、多くの生産者が廃業に追い込まれました。たとえば旧中伊豆町では、300人ほどいた生産者のうち、いまは20人しか残っていません。
不透明な流通に納得できずこうした苦境を打開しようと、小柳出さんや星谷さんら若手のしいたけ農家7人は、「伊豆中央椎茸会」を結成。原木栽培の生しいたけを主力に独自の販路開拓に挑んできました。現在、会員は10人に増えています。「私たちも以前は干ししいたけが中心だったのです」と、結成当時の事情を説明してくれたのは、桑名二朗さん。「安くなっても、その分たくさん食べてもらえるならいいのです。でも、生産者価格は安くなっても、末端の販売価格は安くならない」と怒ります。 秋津和昌さんも、「値段のこと以上に納得できないのは、流通の不透明さです」と不信を口にします。乾物の流通には、いろいろな専門業者が介在し、農協に出荷したしいたけも、これらの業者に買い取られた後は、どのように利用されているかわからないのです。「私たちのしいたけも、中国産と混ぜられているかもしれません」。 自分たちの育てたしいたけを、間違いなく消費者に届けたい。それこそが中央椎茸会メンバーが願ったことでした。
ふるさとネット東海通じて出荷消費者の声が何よりの励み一方、伊豆農民組合に属する勝又浩之さんに、静岡県農民連からしいたけの出荷依頼が来たのは3年前でした。ふるさとネットワーク東海の産直事業で、しいたけが不足していたのです。大量の注文に自分だけでは対応できないと考えた勝又さんは、中央椎茸会に声をかけました。こうしたいきさつを経て、静岡県連の吉川利明事務局長が伊豆を訪問。「農民連に入って、いっしょに産直を広げよう」と呼びかけました。中央椎茸会のメンバー全員がこれにこたえ、2008年1月、生しいたけの産直が始まりました。いまでは出荷量の過半が農民連扱い。生産者名入りのシールをはったしいたけが、東海地方の生協などに並んでいます。 中央椎茸会の荻島泉会長は、「お客さんの声が直接返ってくる。それが何よりの励みになります」といいます。県連の吉川事務局長も、「とても頼りになる産地です。もっと出荷量を増やしてほしい」と大きな期待をかけています。
(新聞「農民」2010.1.25付)
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[2010年1月]
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