「農民」記事データベース20100118-908-06

フレッシュ・柔らか・甘味…

大評判 葉付きこかぶ

困りもの“ヤマセ”を逆手にとって
JA野辺地町(青森県)が生産

関連/大豆畑トラスト10周年を祝う

 青森県の中央、陸奥湾に面したJA野辺地町は、「ヤマセ」を逆手にとってフレッシュ野菜を生産。「葉付きこかぶ」は皮が薄く、真っ白でジューシー、柔らかな甘味が大評判です。
(赤間守)


小さな農協が大きな仕事

 市場から高い評価もらうまでに

画像 野辺地町は県内でも有数の豪雪地帯。そして夏には、冷たい北東の風「ヤマセ」が吹き、気温が低くて太陽が出ない日が多く、しばしば農作物に被害を及ぼす、農家にとっては困り者です。しかし、このヤマセを逆手にとって野菜を作れないかと試行錯誤した結果、たどりついた野菜が「葉付きこかぶ」でした。こかぶは寒さに強く、野辺地の土にあいました。しかも、ほかの地域で作れないときに、涼しい気候を利用して作ることができるという利点もあります。いまでは、50戸余りの農家が年間8億円近くの販売額をあげ、市場からも高い評価を受けるまでに成長してきました。

 組合長の大関政敏さんは「農協と生産者が一体となってがんばり、天候不順による品質低下や値崩れなどを乗り越えてきた結果」と言います。

 基本は土づくり 安全基準まもる

 良質なこかぶづくりの基本は、土づくり。緑肥や畜産農家から出る堆肥を利用し、化学肥料や農薬にたよらない安全基準を守り、使用履歴をかならず付けるよう指導しています。

 最近、NHKの「ためしてガッテン」という番組でかぶが取り上げられ、胃腸の働きを助けるアミラーゼを豊富に含むヘルシーな野菜と注目されています。大関組合長は首都圏や遠く関西にも出かけて、スーパーなどで宣伝。農民連ふるさとネットワークなどが主催した「ふるさと産直みほん市」にも出展、組合長みずからPRし、こかぶの浅漬けなどを試食してもらい、たいへん好評でした。

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“再生産につながる価格に”

 大関組合長は「心配なことは、やはり価格ですね。デフレの影響でしょうか、値が下がる傾向です。1箱5キロで1000円あれば、農家も意欲を持って取り組めるのですが、900円台が続いています。なんとしても再生産につながる価格を維持できるよう図っていきたい」と力がこもります。

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JA直売所で「こかぶは午前中でなくなってしまう」と大関組合長(左)。となりは青森県農民連の宮川れい子さん

 農林中金“指導”に怒る組合長

 JA野辺地町は、准組合員も含めて約360人の小さい農協ですが、いま「合併」が大きな問題となっています。原因は信用事業です。青森県信用農協連合会がなくなったため、農林中金から直接指導されます。窓口には4人配置しろ、貸付部署を設置しろ、常勤役員を3人置け、しかも兼務はだめ。こうした経営基準は、とても小さな農協が対応できるものではありません。さらにJAバンクでは次期ジャステム(全国統一のコンピューター管理システム)への移行等に伴い、膨大な資金を手当てしなければなりません。大関組合長は「『小さな農協は合併してなくなれ』と言っているようなもの。協同組合の精神はどこにいってしまったのか」と怒りがおさまりません。

 しかし、こうした厳しい問題も、こかぶをみんなで育ててきたように、農協の役職員と農家組合員が一体となって取り組めば、かならず乗り越えられるでしょう。


大きくなってうれしい

大豆畑トラスト10周年を祝う

福岡 みのう農民組合が収穫祭

 福岡・みのう農民組合は昨年11月30日、大豆畑トラスト収穫祭を開き、寒風をついて150人以上が参加しました。「10周年記念」と銘打って、西日本新聞の佐藤弘記者(長期連載「食卓の向こう側」の執筆者)を講師に、「食卓の向こう側に見えるもの」という題で話していただきました。アテネと北京の五輪にレスリング選手として出場した池松和彦さんも出席し、子どもが生まれたばかりとあって、“赤ちゃんの噛(か)む力”がテーマのところでは2人で対談しました。最後に、大豆畑トラストで一番最初に大豆をまいた、新日本婦人の会久留米支部の山本夫妻が「生産者と消費者の交流がしたくて始めたが、こんなに大きくなってうれしい」とあいさつしました。

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講師の佐藤弘記者(左)と元オリンピック選手の池松さん

 講演を聴いたみのう農民組合の佐々木督文書記長は、「日本の農業人口は3%しかいなくて、この先だんだん減少していくし、自給率向上といってもなかなか難しい。しかし、食べものとなると国民みんなが関心をもっているので、連載『食卓の向こう側』の原点は、ここにあると思う。食べものを健康の源として位置づけていきたい」と感想を述べました。

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寒空の下、熱心に講演を聞く参加者

 その後参加者は、農家組合員手づくりの炊き込みご飯3種類に豚汁、池松牧場の牛乳、大豆畑トラストで採れた大豆を使ったとうふなどに舌鼓。会場からあふれて立って食べる人も大勢いました。

 会場には、10年の歴史が一目で分かるよう写真も張り出しましたが、今回の目玉は記念DVDを作成したことです。また資料のなかに、遺伝子組み換え特集の新聞「農民」と購読の訴えを入れたところ、さっそく福岡市の方から「読ませて」との連絡が入りました。うれしかった!

(福岡・みのう農民組合 金子徳子)

(新聞「農民」2010.1.18付)
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2010年1月

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