国連気候変動枠組み条約第15回
締約国会議(COP15)に参加して(上)
デンマークの首都コペンハーゲンで12月7日から開かれた「国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)」は最終日の19日、大混乱のなか、法的拘束力を持たない「コペンハーゲン合意」に「留意する」とした文書を採択して、終了しました。結果は、事実上の「交渉の先送り」。しかし混迷を極める交渉会場を一歩出ると、コペンハーゲンの街中に、地球温暖化防止を求める世界のうねりが、大きく、力強く、押し寄せていました。農民連から武田伸也国際部員と新聞「農民」編集部の満川暁代が多彩なNGO活動に参加しました。
(満川)
今こそ気候に正義を! もう一つの世界は可能!
大広場をうめた10万人の人びと
「気候に正義を!民衆に力を!」「もう一つの世界は可能だ。私たちはその方法を知っている!」――12月12日、いてつくような寒さのなか、デンマークの国会議事堂前の大広場を世界中から集まったビア・カンペシーナをはじめ多くのNGOや市民10万人が埋めつくしました。思い思いのふん装を凝らし、色とりどりの旗や横断幕を掲げて、温暖化防止を求める人々の合言葉は、「気候に正義を!」です。デモ行進や集会、パレードなどのさまざまなアピール行動が連日繰り広げられ、その力強さ、活発さは、COP15の停滞ぶりとは非常に対照的で、際立っていました。
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10万人が集まった12日のパレード。国際交渉が行われているベラセンターまで6キロメートルを行進 |
国際交渉の焦点 先送りした合意
COP15に求められていたのは、「京都議定書の約束期間が切れる2013年以降の温暖化防止の世界的枠組みをどうするのか」ということでした。具体的には、(1)世界の気温上昇を2度未満に抑える、(2)先進国の責任と温室効果ガス削減の数値目標を明確にする、(3)途上国も何らかの排出抑制行動を約束する、(4)途上国支援の枠組みづくりと金額を明確にする、(5)「決まったことは必ずやらねばならない」という拘束力ある政治合意をする、などです。
しかし「コペンハーゲン合意」では、「気温上昇を2度以内にすべきと認識する」など、若干の積極的内容が盛り込まれた以外は、これらの焦点は明確には合意されませんでした。さらに、この「コペンハーゲン合意」は、途上国の反発を招いて全会一致による決議には至らず、「留意」にとどまりました。
責任逃れに終始した先進諸国
全会一致による採択にならなかった主な理由として、次の2点が指摘されています。
一つには、先進国、とくにアメリカが自らの歴史的責任と、気温上昇を2度未満に抑えることのできる積極的な削減目標を約束しなかったこと。二つには、国連の公式会議での交渉をないがしろにし、アメリカやG8諸国をはじめとした一部の国々による不公正で不透明な非公式交渉によって、多くの途上国の意見を排除した議事運営が行われたことです。
「コペンハーゲン合意」に反対を表明した途上国が、とりわけ大きな異議を唱えたのが、非民主的な議事運営であり、2週間に及ぶ交渉の混迷を生んだ原因でもありました。
交渉開始早々の12月8日、COP15議長国であるデンマークのラスムセン首相が作成したという「コペンハーゲン合意」の原案がイギリスの新聞にリークされ、その内容が先進国、とくにアメリカ寄りであることが大きな反発を呼んで、会議は3日目にして中断しました。10日以降は多くの会議が非公開で進められ、環境大臣級の交渉が始まった15日以降はNGOの入場が極端に制限される事態も発生。
さらに最終予定日の前日である17日、「合意文書草案」となることを信じて徹夜の交渉の末まとめられた環境大臣級の公式会議の合意案が、いとも簡単にお蔵入りとなり、かわってアメリカを中心に25カ国だけが参加した非公式交渉によってまとめられたラスムセン議長案が、18日の深夜、120カ国の首脳が集まる会議に提案されました。
当然、実質的な交渉から排除された途上国の一部からは強い反対の声が上がりました。
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数少ない公開された作業部会の様子。ワードで作成された合意文書草案がプロジェクターで映し出され、各国からの意見で修正が加えられていく。 |
新自由主義的なやり方は“ノー”
「事実上の交渉先送り」となったのは、合意案の内容の不十分さもさることながら、WTO交渉で推し進められているような新自由主義的な方針をごく一部の先進国で決定し、途上国をはじめとした圧倒的多数の国々に有無を言わさず押し付けるという強引なやり方に対しても、世界的な“ノー”の声が突きつけられた側面があったのです。
(つづく)
(新聞「農民」2010.1.18付)
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