農民連創立20周年記念
ベネズエラ農業視察ツアー(4)
社会主義の基礎「住民共同体」
ベネズエラの革命で一貫して重視されているのは「参加型民主主義」。新しい社会は上から与えられるのではなく、「国民が主人公となって自らつくる」という考え方です。社会変革に地域住民が積極的に参加する仕組みとして始まったのが、「住民共同体」の建設です。
政府の主導では非効率で混乱に
ベネズエラでは2004年以来、さまざまな社会政策が実施されていますが、どちらかといえば政府の主導でそれぞれが個別に分散して進められたため、地域では非効率や混乱が生じることもありました。
一方、地域住民の側には、およそ200世帯ごとに組織された「住民評議会」が全国に3万以上あり、住民自身が諸施策の執行機関を作り、生活改善に取り組んできました。
新たにつくられる「住民共同体」は、これまでの社会諸計画の内容をより高め、地域住民の立場で統合的に推進することを目的に、住民評議会を基礎にして築かれます。従来の基礎行政区(市町村に相当)にとらわれずに、地域の課題の解決に住民自身がより攻勢的に取り組もうという試みです。
視察団は、その先進地を訪問しました。
事業の計画は住民自身が立案
パライソ・デル・トゥーイ住民共同体は、カラカス近郊の極めて貧しい農村地帯にあり、2つの基礎行政区にまたがる33の住民評議会で構成。土地改革によって住民のものになった6000ヘクタールの土地で5900世帯、3万3000人が暮らし、農業の振興、住宅建設、水道や電気の整備、住民の健康管理などに共同で取り組んでいます。これらの事業には政府から資金や資材が提供されますが、事業の計画は住民自身が立案し、労働力も自ら提供します。
視察団を迎えるために朝から準備したという歓迎会では、現地農民の代表が「ベネズエラはアメリカ型の消費主義に汚染されていた。しかし、私たちの文化は生産して消費することだ」とあいさつ。農民連側も「私たちのスローガンも“ものを作ってこそ農民”だ」と応じ、熱く交流しました。
案内された農場は、オルガノポニコという、栽培床が並ぶ独特の方式。有機栽培でレタス、トマト、ピーマン、タマネギなどの野菜をつくっているそうです。こうした野菜農場を、域内に160カ所つくる計画で、50万ドルの政府資金が供与されます。また、キューバ人技術者2人が配置されていました。
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パライソ・デル・トゥーイ住民共同体では、住民が手づくりの料理で歓迎してくれた |
課題のひとつは食糧主権の実現
今年3月に改組・新設された住民共同体・社会保護省のマルゴー・ゴドイ副大臣(29歳・女性)は、「住民共同体の課題の一つは食糧主権の実現」と強調。「住民共同体の建設は、人々の依存的な意識を変える困難なたたかいを伴いますが、これこそが将来の社会主義社会の基礎になるのです」と確信に満ちて語りました。
(おわり)
(新聞「農民」2009.12.14付)
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