COP15の焦点と問題点(下)
持続可能な小規模農民が地球を冷やす
COP15(国連気候変動枠組条約第15回締約国会議)では、ビア・カンペシーナも様々なNGOと共同してアピール行動を行います。
食糧主権の確立が温暖化を防ぐ
ビア・カンペシーナの地球温暖化問題に向けたスローガンは、「持続可能な小規模農民が、地球を冷やす」。ビア・カンペシーナは、化石燃料や化学肥料、農薬、遺伝子組み換えに頼った「工業的大規模農業」ではなく、より少量の化石燃料の使用を可能にし、農薬を削減できる小規模農民こそ、地球温暖化を防止できると呼びかけています。
11月の食糧サミットは、「2050年には90億人を超えると予想される世界人口を養うために、農業生産を現在から70%増やす必要がある」との宣言文をまとめており、気候変動に対処しながら飢餓をいかに克服するかは、地球温暖化対策の重要な課題となっています。
またCO2を大量に吸収している熱帯雨林をどのように保護するかという点も、COP15の大きな焦点です。現在、国際交渉で進められている「REDD」(森林減少・劣化からの温室効果ガス排出削減)や、バイオ燃料の推進は、現実には途上国の小農民の農業生産を破壊しており、ビア・カンペシーナをはじめ多くのNGOから「真の解決策ではない」との強い批判の声が上がっています。
ビア・カンペシーナは、貿易自由化による農産物の輸送の増大が、地球温暖化を促進しているとの問題も提起しています。民主党・鳩山内閣は、温暖化政策では25%排出削減の目標を掲げるなど前向きの姿勢を示していますが、一方でWTO・FTAの推進など、温暖化防止や食糧主権の確立とはまったく逆行する政策も掲げており、地産地消や食糧主権の確立が温暖化防止に果たす役割も大きな焦点です。
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洪水の増えたバングラデシュ(JCCCAのサイトから) |
世論の力が交渉を前進させる
COP15の見通しについて、日本のマスメディアはさかんに「高い目標での決着は難しい」との報道を続けています。しかし、京都議定書では削減義務を負っていないブラジルや韓国、シンガポールなどが中期目標を相次いで発表し、COP15を目前にして排出量第1位の中国と2位のアメリカ、4位のインドが中期目標を提示。12月2日現在で98カ国の首脳が出席の意向を示すなど、COP15での前向きな合意に向けて、世界的な模索が続いています。
地球温暖化をめぐる国際交渉を長く見守ってきたCASA(地球環境と大気汚染を考える全国市民会議)専務理事の早川光俊さんは、COP15での目標について、「重要なのは今後の前進につながるような実効性ある合意ができるかどうかです。京都議定書を採択したCOP3の時も最後の最後まで悲観的な報道が続いていましたが、最終的には世論に押されて、最も原則になる部分で重要な政治決着がされました。コペンハーゲンでも、決めるのは世界の世論の力です」と話しています。
(新聞「農民」2009.12.14付)
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