農民連創立20周年記念
ベネズエラ農業視察ツアー(3)
低利融資・技術指導などで農民を支援
視察団が訪問したララ県のアナ・ソト農場は、大土地所有の未利用地を収用して農民の協同組合に引き渡す「サモーラ計画」によって、各地に建設されている「サモーラ農場」の一つです。
1人の地主が所有していた1400ヘクタールの土地を土地改革庁が収用し、そこに住んでいた83家族の土地なし農民でつくる協同組合に所有権を移しました。視察団を案内したララ県社会主義農民運動メンバーのカルロス・グティエレスさんは、「われわれは土地を求めて20年以上たたかってきました。チャベス政権下の改革でようやく夢が実現しました。ここはベネズエラの社会変革のモデルケースです」と力強く自己紹介しました。
20年以上土地を求めてたたかう
この地方はサボテンが生えるような乾燥地帯です。収用した土地はほとんど未利用で放置されていました。政府は、単に土地を農民に渡しただけでなく、2300万ドルの投資とのべ5万人の労働者を動員して農地を造成し、灌漑(かんがい)設備を整備してきました。また、農業省傘下のさまざまな政府機関が、人材育成や技術指導、低利融資などで農民を支援しています。昨年、35万トンの水を蓄えられる貯水池が完成。318ヘクタールが利用可能となり、散水チューブを張りめぐらせた畑でトマト、ピーマン、タマネギ、メロンなどの野菜が栽培されていました。グティエレスさんは「ようやく最初の収穫を終えたところです」と、うれしそうな表情でした。
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地元農民の案内で新しい貯水池を見学 |
収入は以前の2〜4倍になる
農作業は協同組合のメンバーが共同で行います。決められた労働時間は平日の7時から12時までですが、もちろん、収穫期などは午後や日曜も作業するとのことでした。
視察団から「賃金はどのように配分しているのか」と質問されると、グティエレスさんらは「各人に平等に配分している」と答えました。「個人の能力差はあっても、いまはみんなでがんばろうという段階です」という説明でした。いまの収入は1人1カ月あたり5万円ほど。土地をもたない農業労働者として働いていたころの2〜4倍になるそうです。
現地の農民からも「日本では集団化は行われていないのか」と質問があり、視察団の一人が「日本の農家は農協に組織されているが、ムラの共同作業はほとんどなくなってしまった」と答える場面もありました。
食料品は市価の4〜5割引きで
協同組合は、野菜づくりのほかにヤギ、ヒツジを飼育して、乳、チーズ、肉、皮革製品を周辺住民にも供給しています。また、政府の支援を受ける「メルカール」(人民の店)という食料品店を経営し、基礎的な食料品を市価の4〜5割引で提供しています。
グティエレスさんは、「私たちのささやかな経験が他の国でそのまま役立つとは思わないが、土地改革が豊かな農業生産をもたらした事実は、他の地域でも参考になると思う」と語りました。
(つづく)
(新聞「農民」2009.12.7付)
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