COP15の焦点と問題点(上)
12月7日から18日にかけて、デンマークの首都コペンハーゲンで、「国連気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)」が開かれます。ますます深刻化する地球温暖化に、世界はどう歯止めをかけるのか――。COP15の焦点と、日本の温暖化対策、農民連やビア・カンペシーナの取り組みを紹介します。
(満川 暁代)
京都議定書後の
世界の温暖化対策をどうする?
3つの焦点――先進国は野心的な数値目標を
COP15で話し合われるのは、「京都議定書」の約束期間が終わる2013年以降の、温暖化防止対策の国際枠組みをどうするか、ということです。これまでの国際交渉の経緯から、焦点は次の3点が挙げられます。
(1)2013年以降の温室効果ガスの削減について、先進国は野心的な数値目標を合意できるか。
(2)先進国から途上国への温暖化対策の資金・技術援助の仕組みや金額をどうするか。
(3)排出量が増加している途上国などが、積極的な対策を約束できるか。
地球温暖化について研究している国連の科学者組織であるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、「気温上昇を産業革命から2度未満に抑えること」、そのために先進国全体で「1990年に比べて、2020年までに25〜40%排出を削減(中期目標)」、「2050年までに50〜85%削減(長期目標)」することを求めています。
ところが、今のところ各国が発表している中期目標を足し合わせても、先進国全体の目標は約15%にしか達していません。これに対して途上国から批判が噴出しており、先進国が十分に野心的な目標を掲げていないことが、交渉前進の大きな障害となっています。
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事前交渉が行われた国連ビル前で集会をするNGOの人々(タイ・バンコク、今年10月) |
「共通だが差異ある責任」と途上国支援
そもそも、なぜ先進国が率先して厳しい削減目標に取り組まなければならないのか――。それは京都議定書での「共通だが差異ある責任」という国際合意に基づいています。そして、この合意は3つの焦点すべてにかかわる重要な合意です。
地球温暖化の責任は、CO2などの温室効果ガスを長年にわたって出し続けてきた先進国にあり、今なお一人当たりの排出量は先進国の方が圧倒的に多く出しています。それにもかかわらず、温暖化の被害を真っ先に受けるのは、発展途上国の人びとです。歴史的責任を負う先進国がまず、排出削減すべき――これが「差異ある責任」の意義です。
さらに、貧困や飢餓に苦しむ途上国は資金も技術も足りず、温暖化対策を十分に取ることもできません。途上国が貧困を克服しながら、同時に排出削減をできるよう、先進国から技術や資金を支援することは、富者から貧者への単なる「ほどこし」ではなく、「気候変動被害者への補償」ともいうべきものであることも重要な点です。
一方で、中国はいまやアメリカを追い抜き世界最大の温室効果ガス排出国となっているなど、途上国からの排出が世界のおよそ半分を占めるのも事実です。途上国が排出削減しながら、温暖化に対処するためには「先進国全体で約9000億円の資金が毎年必要」(国連気候変動枠組条約デブア事務局長)と言われており、これだけの資金をどう確保するのかが、交渉前進のカギとなっています。
世界が注目――民主党鳩山内閣の中期目標 このようななかで、日本の民主党・鳩山内閣が、温暖化対策に後ろ向きだった自公政権の態度を転換し、「90年比で25%削減」という中期目標を掲げたことは、世界に歓迎された大きな前進でした。また「鳩山イニシアチブ」として途上国支援を打ち出したことも世界から注目されています。
しかしその内容を見てみると、いくつか重大な問題点も含んでいます。
その第一は、目標達成のための具体策が明らかになっていないことです。とくに「25%」という目標数値には、海外、とりわけ途上国で削減したCO2の枠を買い取り、国内で削減すべき分を埋め合わせるという「カーボン・オフセット」が含まれています。これでは真の意味で先進国としての責任を果たすことにはなりません。
第二に、小沢鋭仁環境相が「排出削減には、原発が必要」との意見書を直嶋正行経済産業相に提出するなど、「原発立国」を掲げた自公政権以上に、原子力発電への依存姿勢を強めていることです。
原子力発電は、安全性が確保されていない技術であり、地震国の日本では安全確保はとくに深刻な問題です。耐震性の不備などから安定的な発電の見通しすら立たっていないのが現状で、原料も輸入頼みです。
第三に、途上国支援の金額が明らかにされておらず、途上国との合意形成に向けて、日本政府は先進国の責任を明確に示す必要があります。
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首脳のハリボテで先進国の排出削減を求めるNGO(バンコク・10月) |
農民連も参加――公害地球懇が代表団を派遣
農民連も加盟する公害・地球環境問題懇談会(公害地球懇)は、12月10日から18日の日程で、コペンハーゲンに代表団を派遣、農民連から2人が参加します。一行は「日本政府は、国内対策による25%削減と、途上国支援で責任を果たせ!」をメーンスローガンに、「ノーモア・ミナマタ」「脱石炭・原発依存」「食糧主権」をサブスローガンにして、アピール行動を行う予定です。このほか公式会議の傍聴や、日本政府交渉団へのロビー活動、世界中から集まったNGO・市民が参加する市内の大パレードに参加します。
(新聞「農民」2009.12.7付)
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