本の紹介
富山 和子 著
海は生きている―自然と人間
「生きているシリーズ」完結編
「水と緑と土」の集大成
資料豊富で読みやすく
「米カレンダー」製作者で知られる富山和子さん(立正大学名誉教授)が、「自然と人間―生きているシリーズ」の第一作「川は生きている」を刊行したのは、1978年のことでした。そして、その後「道は生きている」(1980年)、「森は生きている」(1981年)、「お米は生きている」(1995年)と続き、5作目となった今回の「海は生きている」が、じつに31年でのシリーズ完結編となります。
「川は生きている」は「水道のじゃぐちをひねるとき、あなたは、その水がどこから運ばれてくるか、考えたことがありますか」という問いかけから始まりました。そしてそれは「土のおかげ」でした。でも、土は水に流されずになぜ山の斜面に張りついているのでしょうか。「そうだ。森のおかげ」でした。
山と川を知れば、次に平野です。そこは水田の広がる米の生産地でした。「お米」の話を読んで、「農業は文明の母」だということがよくわかりました。次に、お米などの生産物が運ばれたのが「道」です。自然も人間の歴史も、交通をとおすことによっていきいきと見えてきました。
水の循環をとおしてみてきた「生きているシリーズ」全5冊は、ものごとをトータルで見ることのすばらしさ、いのちのつながりの大切さを教えています。
この本は小学校3、4年生から読めるように、写真やカット、資料なども豊富で漢字にはふりがなも付いてたいへん読みやすく、工夫されています。
富山さんは、あとがきで「大人のみなさんへ」と呼びかけ、「あの美しかった海岸を、かくも無残な姿(コンクリートの工場地帯)に変えてしまった。どうしたら、子どもたちに海を取り戻せるだろう。そんな思いに悩みながら、この本を書きました」と言っています。
「生きているシリーズ」は、富山さんの原点である「水と緑と土」の集大成といえます。
▼定価 1400円(税別)
▼講談社 TEL 03(5395)3625
(新聞「農民」2009.11.30付)
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