農民連創立20周年記念
ベネズエラ農業視察ツアー(2)
大土地所有制度の解体は最優先課題
ベネズエラの革命にとって、農業改革は最優先の課題です。とりわけ、スペイン植民地時代に植民者に土地が奪われたことに起源をもつ大土地所有を解体し、農民に土地所有権を移すことは、その要ともいえるものです。チャベス政権誕生の翌1999年に、国民投票で圧倒的多数の賛成を得て制定された新憲法は、食糧生産を「社会経済的発展の根幹」と位置づけ(305条)、「大土地所有制度は、社会的利益に反する」として、農民が土地所有権を有することを定めました(307条)。
農業改革語る土地改革庁総裁
視察団は農業省のリチャード・カナン副大臣と全国土地改革庁(INTI)のフアン・カルロス・ロヨ総裁から話を聞きました。INTIは、土地改革を推進するために新たに創設された政府機関で、大土地所有者から土地を収用して農民に配分しています。
ロヨ総裁によれば、ベネズエラには約3000万ヘクタールの農用地(農地、牧野、森林)がありますが、革命前の1998年には、全農民のわずか0・4%に過ぎない2500人ほどの大地主が、700万ヘクタールを所有しており、なかには1カ所で187万ヘクタール(日本の国土面積の5%に相当)という極端な大土地所有もありました。
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土地改革庁でロヨ総裁の話を聞く |
こうした土地所有のゆがみが、深刻な社会格差の根源だったのです。多くの農民は、大農場の一角に住み、地主に季節的、一時的に雇われて働く農業労働者でした。生活が成り立たずに都市に流出し、ランチョと呼ばれる貧民街をつくってきたのも、元はこれらの農民です。また大土地所有は、その大部分が未利用のまま放置されていたり、粗放な牧畜に利用されているだけで、国民への食料供給の役割を果たせませんでした。
「サモーラ計画」で農地を配分
土地問題の解決をめざして03年から開始されたのが「サモーラ計画」です。600万ヘクタールが「大土地所有」と認定され、これまでに200万ヘクタールの土地が収用され、農民に配分されました。もちろん、こうした改革には大土地所有者の激しい抵抗があり、200人以上の農民が殺害されたといいます。土地の収用にあたって、軍隊が出動することもあるそうです。
サモーラ計画では、土地を配分するだけでなく、金融支援や技術指導などを併せて行い、営農を維持できるように援助しています。また、農民の協同組合化や、共同体による土地所有が奨励されています。カナン副大臣によると、「チャベス政権以前にも不徹底ながら土地改革が行われたが、農民に対する支援が行われなかったので元のもくあみに戻ってしまった」、そのため低利融資や技術、機械化、かんがい施設の建設に対する支援に力を入れているとのことでした。
(つづく)
(新聞「農民」2009.11.30付)
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