米をえさに活用
「えさ米卵」に取り組む ひたち野農協(茨城)
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「国産飼料で食料自給率を向上させよう!」「飼料米を作って、田んぼをよみがえらせよう」――農民連に団体加盟する日販連(日本販売農業協同組合連合会)傘下の各地の農協では、米を養鶏や養豚の飼料に活用する取り組みが始まっています。「えさ米卵」に取り組む茨城県のひたち野農協を訪ねました。
(満川暁代)
田んぼがよみがえる
自給率のアップにも
やってみる価値あると思って
「いやぁ、そんなだいそれた大志はないんです(笑)。去年は輸入トウモロコシが本当に急騰して、将来も外国産のエサが入り続けるのかと改めて考えさせられました。だから日販連とひたち野農協から“地元の米を飼料に使わないか”という話があった時、不安はあるけど、これはやってみる価値はあると思ったんです」と、頭をかきかき謙そんするのは、飼料米を導入した養鶏農家の小幡清陽さんです。
小幡さんの養鶏場では、6棟ある鶏舎のうち1棟分、5000羽に、輸入トウモロコシを全量、飼料米に切り替えて与えています。「国産の比率は70%に達するのでは」と話す小幡さんは、これまでも遺伝子組み換えでないトウモロコシを、魚粉や大豆かすなどと自分で配合する自家配合のエサにこだわってきました。今では、飼料会社から配合済みのエサを買う畜産農家が多く、自家配合のための機械や設備を持っていない農家も多いのが実情です。「小幡さんの養鶏場で飼料米の導入が実現したのも、長年、自家配合に取り組んできた小幡さんの技術と設備があったことも大きいですね」と、日販連の中塚敏春専務は言います。
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「鶏たちはお米が大好きで、本当によく食べます」と小幡さん |
必要なのは―
国・行政のさらなる支援
消費者の深い理解も…
もちろん課題も多々あります。「一番は飼料米の価格の問題です。今は助成金もあってなんとかできているけれど、今後も養鶏農家が使い続けられる価格であってほしい。それから倉庫や運搬の問題も。とくに飼料の配合工場は、輸入を前提に港に集中しているので畜舎までの運搬費がかかるし、個々の畜産農家の努力だけでは飼料米の導入には限界があります。国や行政などの支援がさらに必要ですね」と、小幡さんは要望します。
来年の生産拡大に向かって走る
小幡養鶏場の飼料米を生産しているのは、ひたち野農協の生産者たちです。ひたち野農協で「えさ米卵」を担当している職員の島田大久さんは、「飼料米の栽培は、去年が60アール、今年は12ヘクタールに拡大。来年は20ヘクタールを超えそうです」と、来年の生産拡大に向けて、走り始めています。
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えさ米卵(左)は薄黄色の黄身が特徴 |
ひたち野農協が飼料米に取り組む背景には、湿田地帯でいかに減反を達成するか、という真剣な模索がありました。「転作面積が200ヘクタールあるのですが、小麦・大豆がうまくできず、これまでソバを作ってきました。ところがソバも連作障害や不作が続いて、ソバに代わる作物はないかと探していた時に、日販連から飼料米の提案を頂いたんです。そこからはもう、手探りでやってきました」と島田さんは言います。
ソバは、地権者から比較的規模の大きい専業農家の担い手が作業受託して生産してきましたが、島田さんはこの受託生産者に飼料米栽培を説得。今年は、大規模農家を含む4人の農家が飼料米生産に乗り出しました。
「やってみたら、反収もなんとか10俵くらい収穫できたし、小幡さんの鶏ふんたい肥を使った循環型農業も実現しました。これからも農協だけでなく、農業改良普及センターや行政も含めた地域全体の力を合わせて、この飼料米を進めていきたい」と意欲満々の島田さん。「やはり助成金の果たす役割は大きいです。来年は助成金の制度が変わるので、地権者と受託者の調整をもっとみんなで相談していきたい」と、語っていました。
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ひたちの農協の島田さん(左)と養鶏農家の小幡さん(右) |
日販連を通じて生協へ供給
「えさ米卵」は今月下旬から、日販連を通じて東都生協に供給が始まります。東都生協やひたち野農協と協力して、「えさ米卵」の周知・宣伝に奔走する日販連の中塚さんは、「取り組みのカギは、消費者です。自給飼料を食べた畜産物を買い支えることが、食料自給率の向上につながるという飼料米の意義を、消費者にもっともっと伝えていきたい」と、熱い思いを話してくれました。
埼玉 本庄・児玉食健連
年末には年越しそばに
埼玉県北部を中心とする本庄・児玉食健連の「9条ソバ畑と年越しそばを味わう会」は、昨年に引き続いて1反の畑にそばをまきました。
今年の9条ソバ畑は、赤そばで「9」の字にしてみました。年末には、地域の9条の会にも呼びかけ、年越しそばを味わう予定です。
(埼玉農民連 立石昌義)
(新聞「農民」2009.11.23付)
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