「農民」記事データベース20091123-902-07

米トレーサビリティ法の問題点

原料原産地の表示義務づけ


米粉原料のパン・めんは除外
――施行も来年10月以降に

 農水省は11月4日、米飯や米を原料とする加工品の原産地を消費者に伝えることを義務づける法律=「米トレーサビリティ法」の施行令を発表しました。「危険なミニマムアクセス米が知らぬ間に国民の口に入っていた」―昨年秋に表面化した輸入汚染米事件。農民連や消費者の「外食や米加工品の原産地表示を義務づけ、消費者に選択の機会を保障せよ」との要求がようやく実現したものです。しかし、対象品目など重大な問題を含んでのスタートです。

 この法律では、米生産者を含め出荷・販売から飲食店・米菓メーカーなどすべての業者を対象に、仕入れや販売などの取引の明細を記録し、保存(3年間)を義務づけています。そして小売店や食堂などで消費者に対して、原産地(国)の情報を伝達することを義務づけています。

 注目された対象品目ですが、施行令では米飯や弁当、米粉、もち、清酒などが含まれることになりました。しかし、米粉を原料とするパンやパスタ類を除外してしまいました。「これらを含めるべきだ」とする農民連などの意見に対して、農水省は「米粉を使っていないパンまで対象にすることになる」「製造、流通業者に過大な負担を強いる」などとしています。

 米粉パンやめんは、米の消費拡大と食料自給率向上の切り札とも言うべきもので、農水省は来年度予算で米粉用などの米生産に10アールあたり8万円の助成を概算要求しているほどです。しかし、原産国が不明では米粉パンやめんの普及に限界があります。また、先の総選挙で民主党が公約した「外食や加工品の原産地表示義務の拡大」からも明らかな後退です。

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今も続くミニマムアクセス米の目視検査(大阪・堺市の倉庫)

 米粉製品の原料としてミニマムアクセス米が主流を占めている現状や、鳩山内閣の目玉政策、農家の戸別所得補償が「農産物の輸入自由化が前提では」との疑念がもたれるだけに、見過ごすことはできません。

 法律の施行は、業者などの取引の記録にかかわる部分が2010年10月からで、消費者への情報伝達にかかわる部分が2011年7月からとなっています。実施までに国民の声を大いに高めて実効あるものにすることが求められます。

(新聞「農民」2009.11.23付)
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2009年11月

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