韓国農民交流と歴史探訪の旅
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農民連関東ブロック協議会 松本 慎一
日本と最も近くて深い国
楽しく考えさせられる旅
大義に死ぬのが孝行
10月17日午後5時に「安重根(アンジュングン)義士記念館」への到着をめざし急いだものの、バスは大渋滞に巻き込まれ、見学が危ぶまれました。ガイドの金然熙(キム・スンヒ)さんが電話で、「日本から安重根の生涯を知りたいと会館に向かっている」と熱く訴えると、特別に入館が認められ、全員が拍手。ようやく公園の高台に立つ記念館に着いたころには、日はとっぷりと暮れていました。
記念館では、安重根の人となり、革命思想、伊藤博文(日本の初代総理大臣)暗殺のいきさつが描かれたビデオを見て、館内めぐり。安重根が中国東北部のハルビンで伊藤博文を暗殺した理由は、国母と言われた「閔妃(ミンビ)皇后」を惨殺(1895年)したこと、朝鮮国を植民地化したことなどがあげられ、日本の犯罪行為を厳しく糾弾しています。
最も感激したのは「不当」な裁判で死刑判決を受けた息子に対し、母親が「正しいことをして受ける刑だから、決して卑屈に振る舞ってはならない。いたずらに生を求めず、大義に死ぬのが母に対する孝行だと思えよ」と毅然(きぜん)とした手紙を送ったことです。
軍に追い詰められて
翌日は、人口9万人の扶余(ブヨ)市へ。小船に乗り、観光名所となっている白馬江の落下巌(ナッカアム、小高い山のがけ)に行きました。ここは西暦660年、百済が唐と新羅の連合軍に追い詰められ、3000人の宮女が身を投げたところです。
なぜか太平洋戦争下の沖縄やサイパンの出来事を思わせるものでした。今は何事もなかったように、ゆったり流れているだけです。その後、国立扶余博物館に行き、法隆寺で発見された蓮華文瓦をはじめ、1500年前から続く日本との交流をさししめす貴重な史料を見ることができました。
今回の韓国歴史探訪は、日本にいてはわからない歴史や文化、交易などを知ることができ、楽しく、考えさせられる旅でした。
そしてガイドをしてくれた金然熙さんの本質をついた深みのある説明は、私たちと韓国の距離を一気に縮めるすばらしいものでした。
(おわり)
(新聞「農民」2009.11.16付)
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