本の紹介
伊藤千尋著
ゲバラの夢 熱き中南米
社会変革に寄せる人々の
熱い鼓動を生き生きと
朝日新聞特派員などとして長く中南米を取材し、多くの著書もある著者が、彼の地の社会変革に寄せる熱い思いをつづった1冊。映画雑誌『シネ・フロント』に掲載された記事をまとめたものです。
第1章では、キューバ革命の英雄=チェ・ゲバラの生涯を追います。アルゼンチンに生まれた彼は、中南米を旅するうちに社会の矛盾に目覚め、グアテマラで社会改革の運動に加わります。やがてメキシコでカストロに出会い、キューバ革命に参加。並はずれた情熱と才知で革命を勝利に導きます。しかし、1967年にボリビアでのゲリラ闘争に破れ、同国軍に殺されます。
それから約40年。2006年にボリビア大統領に当選し、農地改革などを強力に推し進めているエボ・モラレス氏は、「この戦いは、チェ・ゲバラに続くものだ」(就任演説)と叫んだのでした。近年の中南米に起こっている急速な左傾化の根底に、ゲバラの掲げた理想が生きて受け継がれていることが示されます。
第2章では、キューバ革命の50年を振り返り、それがアメリカの覇権主義とのたたかいの歴史だったことを明らかにします。特に、小さな島国の革命が、すぐ隣の超大国の圧力に耐えて生き残っただけでなく、無料で受けられる高度な医療など、アメリカがなしえない成果をあげていることを対比し、人間的な社会のあり方はどちらか、と問いかけます。
第3章では、アメリカを後ろ盾とする軍事独裁政権の暴虐とたたかってきた中南米各国の民衆が、その支配を打ち破って民主化と自立の道に進む歩みを描きます。この章は、映画雑誌の記事にふさわしく、それぞれの国のたたかいを映画作品を素材にして紹介しているのが特徴です。この本を手引きにこれらの映画を鑑賞すれば、中南米の人々の熱い鼓動を生々しく感じとることができるのではないでしょうか。
▼定価 1575円(四六判 272ページ)
▼シネ・フロント社 TEL 03(5802)3121
(新聞「農民」2009.11.9付)
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