米国産牛肉から危険部位・脊柱ズサンな検査すり抜け 輸入再々開後3例目
「全面禁止」公約かかげた民主党 調査要請しただけただちに輸入の全面禁止をアメリカ産牛肉から、BSEの病原体が蓄積しやすいため輸入が認められていない特定危険部位の脊柱(せきちゅう)が見つかりました。10月10日、農水省と厚生労働省が発表しました。政府の発表によると、違反したアメリカ産の牛肉は、ネブラスカ州にあるタイソンフレッシュミート社レキシントン工場から出荷されたもので、冷蔵牛肉732箱(約15トン)のうちの1箱(約16キロ)。購入した都内の業者が、アメリカ農務省発行の衛生証明書に記載がない骨付き肉を発見してわかったもので、輸入検査をすり抜けていました。 2008年4月23日、2009年7月22日に続いて、これで3例目です。アメリカが輸出条件に違反した事例は、輸入の再々開(2006年7月)以降13件目で、しかもレキシントン工場は2度目であり、アメリカまかせの検査体制に批判の声があがっています。 今回の違反事例では、輸入検査をすり抜けていたことも大問題です。農水省はわずか23箱しか検査せず、厚労省は抜き取り検査さえしておらず、あらためて日本の検査体制のズサンさが浮き彫りになりました。
民主党はマニフェストで「輸入牛肉の違反事例があった場合には、輸入の全面禁止措置など直ちに対応する」と公約していただけに、民主党中心の政権になってはじめての重大違反であることから、その対応が注目されていました。しかし、赤松広隆農水大臣がとった措置は、出荷元からの輸入を停止してアメリカ農務省に調査を要請しただけ。これでは、自民・公明政権となんら変わりません。しかも赤松大臣はこの時訪米していたことから、この違反事例の件を現地で報告を受け、その直後にヴィルサック農務長官と会談したにもかかわらず、アメリカ側から「20カ月以下としている輸入条件の撤廃」を要請される始末です。 こんな重大な違反を繰り返すアメリカ産牛肉の輸入は、ただちに全面禁止すべきです。
魚流通 今後どう変わるか21世紀の水産を考える会がフォーラム築地移転で卸売市場再編ねらう21世紀の水産を考える会は10月3日、都内でフォーラム「築地移転から見える問題、魚流通はどうかわるか」を開き、築地市場移転を中心に魚の流通は今後どうかわるのか、意見をかわしました。参加者は会場いっぱいに40人近くが集まり、関心の高さを示していました。東京・築地市場の移転問題は、おもに移転先(豊洲)の土壌汚染やオリンピック用地の問題とのかかわりなどがテーマになってきましたが、21世紀の水産を考える会は魚流通の観点からこの問題を取り上げました。漁業情報サービスセンター流通課長の石井元氏が全国の生産地市場の現状や今後の動向について、また広島大学名誉教授の三国英実氏が消費地市場としての築地移転問題について、それぞれ報告しました。 石井氏は、漁業経営体数や漁業就業者数、漁船数、生産量などの年変動グラフを示しながら、「国内漁業の衰退は明確で、それに反して魚の輸入量は増大した。その結果、国内の生産地市場の取り扱いは減少し、市場の民営化が進んだ。漁協開設の一般市場では、外食産業への出荷や直接販売などが進み、これまででは考えられない変化が生まれている。漁協合併とともに拠点化が進み、乗り遅れた中小市場の生き残りは厳しくなっている」と報告しました。 また三国氏は、小泉「構造改革」で市場の再編と民営化が進み、魚類の小売りの7割がスーパー、量販店で占められていることから、多くの中央市場が地方卸売市場になり、一方で一部の市場が巨大化してきたと、この間の特徴を述べ、「築地から豊洲移転の目的は、スーパー、量販店による仕入れ、転売、加工などの役割を卸売市場に押し付けるもので、今回の豊洲移転では、関東一円の卸売市場の築地への合併もめざしている」と報告しました。 討論では、「築地移転問題の根の深さを知ることができてよかった」「汚染土壌を入れ替えても強行しようとする行政や流通資本のもくろみを知ることができた」など多数の意見が出されました。最後に三国氏は、「産直やこれまでの魚屋さんによる販売など、日本の魚食文化が残るような築地市場に改善すべきだ」と述べました。 (21世紀の水産を考える会 山本浩一)
(新聞「農民」2009.10.26付)
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[2009年10月]
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