「農民」記事データベース20091019-897-09

ビア・カンペシーナ国際青年会議に参加して

ビア・カンペシーナ東南・東アジア地域代表
農民連青年部部長 杵塚 歩さん

 ビア・カンペシーナ国際青年会議 in スペインが9月24日から29日まで、スペインの北東部に位置するアラゴン州ウエスカ県プイデシンカ村で開かれ、9つあるビア・カンペシーナの各地域の代表、27カ国から現地を含め60人を超える青年が集いました。日本の所属する東南・東アジア地域からは、農民連青年部長の杵塚歩さんのほかに、東ティモールとタイの青年が参加しました。


農村に青年を取り戻し
自信とアイデンティティを

 青年の状況は世界的に共通

 地域からの報告を聞いていると、農村の青年が直面している状況がこんなにも世界的に共通しているのかと驚きます。

 第1に、すべての国で農村での暮らしが成り立たず、青年が職を求めて都市部や海外へ移住していることです。メキシコの青年は「アメリカの農業労働者の80%はメキシコ人で、うち50%は不法移民だ。移民労働者は法律の保護を受けられないため、過酷な労働条件にさらされている」と報告していました。

 第2に、WTO(世界貿易機関)やFTA(自由貿易協定)の自由貿易主義によって、海外から大量の安価な農産物が持ち込まれ、国内の農産物価格が暴落していることです。マダガスカルでは、輸入米の影響で米価が暴落し、多くの農家が米生産をあきらめざるをえない状況だそうです。

 第3に、農業という職業と農民に対する社会的な差別があることです。人々に食糧を提供するという重要な職業にもかかわらず、農業の真の価値が認められていない矛盾や、農家が百姓であることに誇りを持てない現実などに、胸を締めつけられます。しかし、国籍や言語、文化の壁を越えて、私たち青年の視点から青年の言葉で率直に語り合っていると、不思議とどんな困難な状況でも希望に変えられるという力がみなぎってきます。

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マドリードからバスで10時間、プイデシンカ村に世界の青年が集まりました

私たち農民連青年部を中心に
幅広く働きかけ連帯の渦大きく

 農業での役割さらに明確に

 この会議で、18人で構成する国際青年委員会が創設されました。東南・東アジア地域からは、私と東ティモールのアルセニオさんが地域の青年調整員として今年3月の集会で選出されています。この委員会の創設は、農業と組織内での青年の役割をさらに明確にし、青年が自覚をもって貢献していくための重要な一歩です。そして、青年が誇りを持って農業に従事するためのキャンペーンとして「農村に青年を取り戻し、青年に自信とアイデンティティーを取り戻そう」という呼びかけが提案されました。これは、私たち農業青年の日常から発せられた切実な願いであり、未来を自らの手で切り開くための積極的な意思表示です。この熱い青年キャンペーンにこたえて、日本でも農民連青年部を中心に組織内外へ働きかけ、青年連帯の大きな渦を作っていきたいと思います。

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各地域から、農地や移住、新自由主義と青年への影響について報告されました

 仲間づくりが企業支配に抗する力

 ブドウ農家の視察とそこでの話は、私の地元、静岡での茶農家の未来を暗示しているようで、とても衝撃的でした。スペインのブドウ農家は、ブドウを生産したあと、醸造設備と販売手段を持たないために、ワイン会社に安価で買いたたかれ、契約栽培の名目で生産も厳しく監視されています。静岡では、まだ各地域に共同の茶工場があり、小さな茶工場を持つ個人農家もありますが、市場の低迷や後継者不足から大手茶企業に生葉で売る「葉売り」が年々増加しています。茶やワインのように加工しなければ商品価値が出ない農作物にとって、農家が自身で加工施設を持ち技術を高めることは、農地の維持と同じくとても重要です。そして、これらの技術を継承するのは、若い世代の後継者です。農地を守り、技術を切磋琢磨(せっさたくま)する地域での仲間づくりが、企業による農業支配に対抗する道であり、私たち青年の役割だと強く思いました。

(新聞「農民」2009.10.19付)
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2009年10月

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