本の紹介
安田節子著
「自殺する種子―アグロバイオ企業が食を支配する」
工業的な農畜産業の矛盾暴き、構造を解明
巨大アグロバイオ(農業関連生命工学)企業が、遺伝子工学を駆使した生命特許という手法で種子を独占し、世界の食を支配しつつあります。本書は、工業的な農畜産業の矛盾を暴きつつ、その構造を解明します。
穀物価格の高騰で、もうけを手にしたのは、大手穀物企業や巨大アグロバイオ企業。一方で、日本の消費者や農家は、食品価格や飼肥料の高騰などで大打撃を受けました。遺伝子組み換え種子で、世界の食を支配しようとするアグロバイオ企業は、遺伝子を特許化し、研究・開発を進めています。
こうしたアメリカのバイオテクノロジー戦略は、WTO(世界貿易機関)の施策と相まって、日本農業に、いっそうの貿易自由化やミニマムアクセス米輸入の増加、減反の強制を押しつけています。40%前後の食料自給率で推移する日本にとって、農業を振興し、自給率を上げることが、最大の国際貢献であり、安全保障政策です。脱グローバリズム、脱石油の農業が、新しい「食」と「農」の未来を開きます。
アグロバイオ企業の世界戦略と遺伝子組み換え食品の現状、農業にもたらす影響などについての問題の解明が本書に凝縮されています。
著者は、1990年から2000年まで日本消費者連盟に勤務し、96年には「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」を立ち上げました。現在は、食政策センター「ビジョン21」を主宰しています。
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平凡社 TEL 03(3818)0874
定価=756円(税込み)
(新聞「農民」2009.10.19付)
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