「農民」記事データベース20090914-893-08

リサイクルシステム続ぞく確立

第17回生ごみリサイクル交流会
各地のえりすぐりの情報を交換

ごみ再処理で減量堆肥化や飼料利用も

 NPO法人有機農産物普及・堆肥化推進協会などでつくる実行委員会は8月24日、東京都新宿区の早稲田大学国際会議場で第17回生ごみリサイクル交流会「生ごみは宝だ!」を開き、各地で行われているリサイクルシステムの確立、ごみの減量化や堆肥(たいひ)化の取り組みを交流しました。


自然エネルギー利用で環境町づくり

 同協会の瀬戸昌之理事長が「今回も各地のえりすぐりの話題を準備しました。大いに語り合って有意義な情報交換をしてください」と開会あいさつしました。

 全体会の事例発表では、高知県梼原(ゆすはら)町環境推進課の岩本直也課長が「地球温暖化防止に向けて環境の里づくりが進む…自然エネルギーの活用、森林の保全、土づくりセンター」のテーマで報告。梼原町では、町の面積の91%を占める森林、四万十川の源流域という恵まれた立地条件を生かし、風力、太陽光、小水力などの電力のほか、地熱、木質バイオマスを利用した自然エネルギーを活用しています。

 また町として、町産材で住宅を建築した人に助成を行っているほか、良質で安価な堆肥を安定的に供給することをめざして建設された土づくりセンターが、町内のバイオマス資源を有効に活用していることを述べました。

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全体会であいさつする瀬戸理事長

 コストダウンにも

 次に、小田急フードエコロジーセンター(神奈川県相模原市)の顧問で獣医師の高橋巧一氏が「食品残さのリキッドフィード(発酵させた液状のエサ)で養豚…できた肉は店で販売する“食品ループ”を実現」と題して発表しました。

 小田急グループは、食品廃棄物のうち、再生利用可能なものを破砕、殺菌、発酵処理し、液体状の飼料を製造するフードエコロジーセンターを開設。リキッド発酵飼料の特性として、牛乳、ヨーグルトなどの液状原料をそのまま利用することでエネルギーコストを下げていること、消化効率がよく、余分な窒素分が排出されないため、ふん尿のアンモニア臭が軽減されるなどの優位性を紹介しました。

 ブランド品で販売

 同センターは、製造した飼料を用いて肥育した豚肉を小田急グループで購入し、ブランド商品として販売するリサイクルシステムを実践しています。伊勢原市の養豚農家、亀井隆さんは「このシステムが、えさ代の削減、病気の激減、給餌(じ)作業の効率化などの成果をあげている」と語りました。


堆肥を活用した野菜など学校給食に

 臭いを出さない

 午後からは4つの分科会が行われました。「臭(にお)いを出さない生ごみ堆肥づくり」分科会では、有限会社ドンカメの小久保行雄代表取締役が、発酵床で堆肥原料を混合し、臭いをほとんど出さない事例を報告。

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「臭いを出さない生ごみ堆肥づくり」分科会

 栃木県芳賀(はが)町では、町のスローガン「環(わ)の町芳賀」を実践し、生ごみ堆肥化プラントを設置。飲食店の生ごみを回収し、地域の身近な循環資源を活用して作られた堆肥を使って、地力の衰えた農地の再生に取り組み、安全で良質な農産物を収穫するなど、地産地消の地域リサイクルシステムの構築に取り組んでいます。

 現在では、企業の社員食堂や学校、一般家庭の生ごみ、牛ふん・鶏ふんなどを堆肥原料として、1年当たり3066トンの原料から1468トンの堆肥を製造し、地元の農業に生かされています。

 さらにドンカメでは、子どもたちを肥料センターに招き、堆肥のことをよく知ってもらうように、地産地消の学校給食、食育や食農活動などに取り組んでいます。芳賀町の農家、手塚孝夫さんは「堆肥を使って育てたトマトが学校や社員食堂で好評だ」と述べました。

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子どもたちに食育と環境教育を実施(ドンカメ提供)

 一貫したシステム

 次に、生ごみ処理機の提案から、有機肥料の生産、農家への肥料提供、農産物の販売まで一貫した食品リサイクルシステムを管理・運営する有限会社アグリクリエイト東京支社の高安和夫支社長が報告。

 同社では、生ごみを乾燥させ、脱臭、高温殺菌処理などを経て分別し、糖みつやカルシウムの投入、かくはん、粒状に加工するなどして、肥料を製造しています。

 さらにアグリクリエイトの伊藤仁主任は、東京都港区や足立区の小・中学校で生ごみ処理機を使って、生ごみを乾燥させ、肥料化して、農家に使ってもらいながら、その農家が育てた野菜を学校給食に提供するエコ給食ネットの取り組みを紹介しました。

(新聞「農民」2009.9.14付)
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2009年9月

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