自公政権を終わらせ、農業と食糧を守る政治を米価が暴落し、民主党が日米FTA(自由貿易協定)を提案するなかで、農業・食糧問題が一大争点になっている総選挙。論戦はどうなっているのか、全国食健連(国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会)が行った公開質問に対する回答(2面)や各党幹部の発言で検証します。
日米FTAが一大争点反発のがれの民主党の立場民主党がマニフェストで「締結」を公言したことに国民的な怒りが高まっている日米FTA問題。民主党は公示直前になって「締結」を「交渉促進」に修正し、「農業を犠牲にした交渉の妥結はありえない」と弁明しています。しかし、こんな言い訳は信用できません。“影の党首”といわれる小沢前代表は「修正は必要ない。日米FTAを結んでも何も心配はない」と言い放ち、同党の内部資料によると「FTA推進の考え方は一貫しており、公約の修正ではない」。要するに、いくら批判されても、あくまでも日米FTA推進の立場は変えず、小手先で反発のがれをしているにすぎません。 さらに岡田幹事長は「相手がある話なので『締結』より『交渉促進』という表現が望ましい」「4年以内の日米FTA締結をめざす」と、期限を区切ると言明しています。 しかし「相手」のアメリカは、農業抜きの日米FTA交渉はありえないと繰り返しています。実際、日米の関税率を比べると、日本は工業製品の関税がほぼゼロなのに対し、重要農産物の関税率は高く、アメリカはその逆(表)。世界経済危機のなかで、ますます工業生産が衰退しているアメリカが、日本に農産物の自由化を求めてくるのは子どもにもわかる理屈です。
きっぱり反対明快な共産党この問題を最もきびしく批判し、「日米FTAにはきっぱり反対する」と明快なのは日本共産党です。志位委員長が党首討論(8月17日)で「交渉に入るべきではない」とただしたのに対し、鳩山代表は「私はまったくそう思ってはいません」と、あくまで日米FTAに固執する態度に終始しました。日本共産党はマニフェストでも「食糧主権」を尊重する立場から「WTO農業協定を根本から見直す」、FTAについては「農業と食料をはじめ国民の利益に重大な打撃をあたえるものには反対」と明確です。
「民主党は日本農業をアメリカに売り渡す」と激しく攻撃している自民党・公明党はどうでしょうか? 自民党はマニフェストで「WTO交渉早期の妥結、FTA交渉を積極的に行う」と述べ、公明党にいたっては「オーストラリアなどとのEPA・FTAを積極的に推進する」としています。両党とも“守るべきは守る”とも言っていますが、これは、民主党が後で付け加えた言い訳を前もって言っているにすぎません。 なによりも、国内の農民には減反を押しつけながらミニマム・アクセス米を輸入し、WTO協定をどの国よりも忠実に実行して日本農業をここまで危機に追い込んできた責任はまぬがれません。自民・公明両党は即刻退場すべきです。 社民党はマニフェストで「日豪EPA交渉反対」「農産物の輸入拡大、国内農業の縮小につながるEPAやFTAには反対」とのべています。しかし、これだけ争点になっている「日米」に触れないのはなぜなのか? また同党はマニフェストに日本共産党とならんで、食糧主権をうたっていますが、それならばなぜ食糧主権確立に逆行するメキシコ、フィリピンなどとのFTA協定に軒並み賛成してきたのか? ミニマム・アクセス米の輸入を受け入れ、日本農業つぶしを加速させてきたWTO協定は、自民党が交渉を進め、現在の民主党、公明党、社民党の前身の連立政権・細川内閣が受け入れを決め、自民・社会連立の村山内閣の時に国会で承認したという“流れ作業”で行われました。これにいっさい手を染めていないのは日本共産党だけでした。 かりに民主党が政権について、日米FTAの動きがもちあがった時に、どの党が待ったをかける「防波堤」になることができるのか、答えは明らかではないでしょうか。
米価暴落の緊急対策は?農民連は4月以来、「政府自身が適正備蓄水準としている100万トンまで米を買い入れ、米価下落の緊急対策をとれ」と要求してきました。しかし、政府がサボっているうちに超早場米の価格が下落し、このままでは史上最悪の暴落になるおそれがあります。これに対する各党の政策は――。日本共産党はマニフェストで、価格保障と所得補償を組み合わせて1俵1万8000円以上の米価の実現を要求するとともに、「米価が急落している現状で、政府は、備蓄米の買い入れをルールどおりに行い、米価の低落を防ぎます」と、緊急対策をかかげている唯一の党です。7月29日には政府に要請も行っています。 社民党も食健連の公開質問に対して「早急に買い入れを行うべき」と答えています。しかし国民新党は「現段階での数値を含む回答は差し控える」という官僚的な返事。 公明党は「買い入れは必要ない」と冷たく答え、自民党は「米価の下落に対しては総選挙後きちっと対策を講じる」という後回しの回答。両党は、選挙に負けるまではやせても枯れても政権党です。わずかな予算でできることを拒否したり、先のばしにする――これで何が「責任力」でしょうか!
野放しにしてきた自公政権もともと、WTO協定受け入れといっしょに食管制度を廃止したのは自民・社会・さきがけ政権であり、「米改革」で暴落も大企業の買いたたきも野放しにしてきたのは自民・公明政権です。水よりも安い米にしてしまった“現行犯”、自民・公明にはレッドカードを!民主党は食健連の質問に対し、直接の回答を避け、戸別所得補償について説明し、ミニマム・アクセス米を含む300万トンの「備蓄体制を確立する」と述べています。しかし、いま求められているのは緊急対策です。これを事実上拒否し、いつ実現するか分からない300万トン備蓄と戸別所得補償構想でお茶をにごそうというのでしょうか? さらに深刻なのは、民主党の価格保障アレルギーです。同党のネクスト農水大臣は自民党との公開討論で「米価が下がったから米を買い上げるというかたちの価格支持政策はとるべきではない」と再三にわたって要求(「言論NPO」主催「政策公開討論会」)。「WTOが価格支持政策を禁止しているから」というのが、その理由です。 農産物の自由化と米価暴落は、財界中心・アメリカべったり政治の矛盾の集中点です。これにきっぱりストップをかける勇気と政策を持っているのはどの党か、いまこそ見きわめが大切です。
(新聞「農民」2009.8.31付)
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[2009年8月]
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