天候不順米価暴落に追い打ち需給安定と価格回復いよいよ急務に
不作になったら農家は“三重苦”長雨や豪雨、日照不足と低温など異常気象による農作物への影響が次第に深刻になっています。気象庁調べでは、7月の日照時間は北海道・東北全体で平年の67%、中国地方は46%、北陸49%、九州北部55%、近畿58%など。特に北海道の降雨量は平年の2・7倍を記録し、収穫期を迎えた麦の刈り取りができず、倒伏や穂発芽などの被害が広がっています。 稲作への影響では、出穂を前にした北海道や青森県をはじめ東北各地で7月の中〜下旬にかけて16度前後の低温で、「障害型不稔」が懸念されています。生育は各地とも「2〜5日程度の遅れ」とされ、「今後の天候次第である程度の回復は可能」との声もありますが、気象庁は「8月も7月同様晴れの日は少ない」として、「異常天候早期警戒情報」を週2回発表しています。また農水省も8月4日、「日照不足・低温等対策連絡会議」を設置しました。 民間の調査会社「米穀データバンク」は7月31日現在の作況を「96」(やや不良)と発表しましたが、8月の天候はまったく配慮されていません。いまの時点で断定はできませんが、少なくても「豊作」や「平年作」はむずかしいと思われます。もしも不作となれば、農家は肥料高騰などによる生産費の上昇と米価の暴落、さらに収穫減という“三重苦”を受けることになります。
政府備蓄米はわずか38日分米の需給への影響はどうでしょうか?国産米の6月末の繰越在庫は民間と政府合わせて298万トンで、国民の消費量の132日分です。これは従来の米穀年度の期末(10月末)に置きかえると、繰越在庫はわずか21万トンで9日分程度です。しかもこれは民間を含めた在庫であり、政府が直接コントロールできる備蓄米は6月末の時点で86万トン、わずか38日分にすぎません。農民連がかねてより指摘してきたように「国産米は過剰どころか不足状態で、一度不作になれば、即パニックになりかねない」大変危険な状態なのです。 価格の動向にも重大な影響が及びます。いまは底の知れない暴落の最中にあり、09年産新米は九州、四国産の大幅下落で始まりましたが、不作が確定的になれば価格は上昇、それも暴騰という局面も十分あり得ます。わずかな期間に米価が「暴落から暴騰」などあってはならないことです。 こうした事態を避けるためにも、緊急に米価の回復と需給の安定をはかるべきです。末端の価格は一度下げてしまうと再び上げるのはきわめて困難です。今は各地で生産者の仮渡しを決め始める大事な時期です。対策はいますぐ手を打つことが必要です。
不作判明後では失政の上塗りにこの間、政府は備蓄米を買うべき時に買わず、備蓄水準に大穴をあけ米価を暴落させました。「新米の作況や需給動向を見ながら適切に対応」(8月5日、農民連との農水省交渉)などとのんきな対応をするなら、失政の上塗りをすることになります。そもそも、不作が明らかになってからでは備蓄米の買い入れは不可能です。08年産、09年産問わず、作柄に関係なく、少なくても穴の開いた14万トンはただちに買い入れて、需給と価格の安定を図るべきです。それが米農家、業者、消費者を救う政府の果たすべき最小限の役割です。
(新聞「農民」2009.8.17付)
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[2009年8月]
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