日本農業守る勢力の躍進こそ
新潟県農協中央会元総務部長
コープにいがた元副理事長
西山文四郎さん(81)
WTO協定受け入れた自公政権
今の農政の問題点は、第一に、自民・公明政権がWTO(世界貿易機関)の農業協定を受け入れていることです。これは、新自由主義の農業版です。こうした姿勢を改めて、WTOにはノーを貫くことが前提でないと、農業の再建は不可能ではないか。
二つめに、WTO協定で米の自由化を受け入れる以前は、加工米も含めて、基本的に自給していたわけです。それが、減反に次ぐ減反を推し進める一方で、加工米は輸入米が大半を占めるようになりました。そのうえ、生産費を償う米価を維持する制度をつぶし、国の責任を放棄したわけです。
生産者が一番心配しているのは、今年採れた米の価格が、下がるのではないかということです。政府は、再生産できるように、米価下落に歯止めをかけることが最低限必要です。
三つめは、中山間地の問題です。私の故郷は、長野県の近くの牧村(現上越市)という中山間地です。新潟県には中山間地がたくさんあり、ほとんどが10年もすれば崩壊するのではないかと言われています。平場だったら、機械化で、従事する人が少なくても、なんとか水稲は作れますが、中山間地では不可能です。山に人が住まないと、山林は完全に荒れます。山を整備しないと、地震や洪水のとき、大災害が起きる大きな要因になります。
民主党は価格保障を否定する
もう一つ付け加えれば、民主党は、原則的にWTO協定受け入れ賛成、FTA(自由貿易協定)・EPA(経済連携協定)推進で、農産物の輸入自由化万能の立場ですから、警戒する必要があります。日米FTAの締結をマニフェストに掲げましたが、これでは日本の農業は崩壊してしまいます。また戸別所得補償を2011年度から導入すると言っていますが、その中身がはっきりしません。当然、財源が問題になると同時に、価格保障については否定しています。これでは財源がいくらあっても足りず、無責任な政策ではないでしょうか。
今度の総選挙では、農民の立場にたって農業を守る勢力がどこまで躍進するのかにかかっています。その躍進の度合いによって、今後の農政の方向が決まってくるとみています。
(新聞「農民」2009.8.17付)
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