イタリア ラクイラ・サミット宣言「海外農地収奪」に歯止めを国連人権理事会もルール提案
7月8日からイタリア・ラクイラで開催されたG8サミット。G8首脳だけの会議は初日だけで、金融経済危機の克服や、地球温暖化対策、アフリカ開発援助などについて、すでに事務ベースで協議ずみの「宣言」を採択しました。
先進国だけではリードが不能にこのなかで注目されたのは、アメリカのオバマ大統領による核兵器廃絶発言を受けて、核不拡散と核兵器のない世界に向けた取り組み強化が首脳声明に盛り込まれたことです。2日目には、G8に新興5カ国(中国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカ)とエジプト、スウェーデン(EU議長国)が加わって拡大首脳会議が開かれ、持続可能な成長を中心に「地球規模の課題推進」に関する初の共同宣言が採択されました。しかしこのなかには、市場開放の促進、保護貿易主義の否定、WTOドーハ・ラウンドの2010年妥結という表現も盛り込まれました。
対象国で農民や政府の抵抗も…最終日には、さらにアフリカ諸国を加えた拡大会合が開催され、貧困国の食料確保のために3年間で200億ドル(1・8兆円)の支援が約束されました。この拡大会合で採択された「食料安全保障に関する共同声明」では、アフリカ諸国などで起きている農地の争奪問題について、「農地は国の所有権を原則とする」方向づけが示され、「一時的な食糧援助でなく増産を助ける長期的投資」が強調されています。 途上国の農地収奪は表のように、いま激しい勢いで進められていますが、一方では、国連人権理事会の「食料に対する権利」特別報告者(ドシュッテル氏)による提言(注)のように、歯止めのためのルールの提案も行われています。 また、対象国とされている各国では、農民や政府による抵抗も続いています。 例えば、マダガスカルでは、韓国の大企業・大宇による130万ヘクタールの農地リースに国民が反発して政権が倒され、新たに就任した大統領が韓国からの進出協定をキャンセルする事態となっています。タイ政府は、湾岸諸国による米生産への進出提案を公式に拒否しており、ラオス政府も外国投資家による村人の農地や保護林を含む土地の取得に見直しを始めています。
しかし、この拡大会合による共同声明でも、貿易自由化促進、WTOの順守、輸出規制の撤廃など、食糧主権確立の方向とは矛盾する内容も含まれていることに留意しなければなりません。 (山本)
(注)国連人権理事会のドシュッテル氏による提言 (新聞「農民」2009.7.27付)
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[2009年7月]
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