映画紹介
「未来の食卓」
(08年/フランス)
「給食をすべて“有機”に」
小さな村の挑戦を追う
農業大国フランス。美しい農村風景は雑誌やテレビでもおなじみです。しかし、その農村の土や水は農薬や化学肥料で汚染され、農家や農村の子どもたちの健康が深刻にむしばまれていました。
南フランスの小さな村、バルジャックでは、こうした事態を憂慮した村長と議会が「学校給食をすべてオーガニック(有機農産物)にする」と決定。村人たちとともに前例のない試みを開始します。この映画は、その1年間を追ったドキュメンタリーです。
村の給食センターが供給する給食は1日に250食ほど。近隣で有機農業に取り組む農家や村の専門店から新鮮な食材が運び込まれます。栄養士や調理師が工夫を凝らした手作りの味に、子どもたちは「おいしい」と応えます。
彼らの喜びは親たちに伝わり、家庭の食事も変わっていきます。母親たちは語り合います。「有機農産物は少し高いけれど、余計なものを買わなくなったから、支出は変わらないわね」。
やがて村の市場に有機農産物があふれ、パン屋の小麦もオーガニックに。学校には村人たちが集い、農業や食生活をめぐる議論の輪ができます。食を通じて地域が変わっていく様は感動的です。
農業補助金の功罪など専門的な問題にも目配りがされ、食と農の問題に取り組む日本の関係者にも、大きな示唆と勇気を与える作品です。
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『未来の食卓』
監督‥ジャン=ポール・ジョー/112分
8月上旬、シネスイッチ銀座(東京・銀座)、アップリンクX(東京・渋谷)にて公開。全国順次公開予定。
(新聞「農民」2009.7.13付)
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