「農民」記事データベース20090608-879-01

全国食健連シンポ「一大事!私たちの“食と農”」

真に農業守る道見きわめよう

関連/世界が注目する運動さらに大きく

 国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会(全国食健連)は5月23日、東京・新宿農協会館でシンポジウム「一大事!私たちの“食と農”」を開催し、農地法改悪など、動きが急になっている農政の問題について討論しました。会場は140人の参加者で満席になり、「食と農を守ろう」という熱気にあふれました。


食・農を新たなもうけ口にする
大企業の横暴は許せない!

 消費者行政にも問題

 最初にコーディネーターの坂口正明さん(食健連事務局長)が「食糧・農業問題に国民の関心が高まっているが、大企業も新たなもうけ口として関心を高めている。農政が、国民の要求に応えるふりをして、財界本位にすすめられている」と問題提起し、真に農業を守る道を見きわめる議論を呼びかけました。

 パネリストとして発言した福島県の農家、根本敬さん(農民連副会長)は、「耕作放棄地は『農政失敗象徴地』だ」と告発。地域の農家が採算を度外視して回復の努力をしていることも紹介し、農地法改悪では耕作放棄地はなくせないことを強調しました。また、新規就農者を迎え入れるカギとして、「地域での生活基盤を兼業も含めて整えることが大切」と述べました。

 弁護士の神山美智子さん(食の安全・監視市民委員会代表)は、食の安全をめぐる規制緩和が1980年代から着々と進められてきたことを振り返り、「私たちの備えが十分でないうちに、敵はすぐそこに迫ってきた」と危機感を表明。食品安全委員会を含め、今の消費者行政が「公正・中立」の名で消費者の主張を無視していることを批判し、「心配だ」という声を届ける市民運動の重要性を力説しました。

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4人のパネリストがそれぞれの視点で報告

 汚染米事件は未解明

 農水省職員でもある湯川喜朗さん(食農大阪府民会議幹事)は汚染米事件について、「真相はまだ解明されていない」と発言。また、「テレビの報道は視聴率を意識して悪徳業者と官僚を追い回すことに終始し、根本にあるミニマムアクセス(MA)米の問題が伝えられていない」と指摘。農政事務所を廃止しようとする攻撃に反撃するたたかいが重要だと述べました。

 農民連副会長の真嶋良孝さんは、WTO体制のもとで多国籍企業が世界の農業を支配している状況を報告。農産物や資材の貿易だけでなく、世界的な農地の囲い込みが起こっている実情を資料で示し、日本の総合商社も争奪戦に加わっていることも明らかにしました。そして、「日本の農政は多国籍企業を応援し、食糧主権や地球温暖化防止を求める世界の流れに逆行している」として、その転換を訴えました。

 カビが出るのは当然

 4人のパネリストの報告を受け、会場の参加者も発言。農民連ふるさとネットワークの横山昭三さんが「『安全宣言』後もMA米からカビが続々と見つかるのはなぜか」と質したのに対し、湯川さんは「高温多湿の地域から船で運んでくるので、カビは出るのが当たり前」と答え、神山さんは「『なぜそんな米を買うのか!』という問題。MA米はやめる以外にない」と応じました。

会場の参加者も活発に発言

 また、自治労連の熊谷守朗さんや農業・農協問題研究所の内山実さんは、「平成の大合併」で各地の農業委員会の力が弱まっている実情を報告。「広大な面積をわずかな委員と事務局職員で担当することになり、農地法改悪案が求めている過大な役割はとても果たせない」と述べ、連帯したたたかいを呼びかけました。


全国食健連総会

世界が注目する運動さらに大きく

多彩な取り組みを交流 確信に

 全国食健連は5月24日、都内で2009年度の総会を開き、24の都府県と15の中央団体から65人が参加しました。

画像 主催者あいさつで農民連の白石淳一会長は、来年3月で結成20年を迎える食健連運動を振り返り、「私たちと世界の運動が結び合い、WTO(世界貿易機関)は今や“死に体”だ。大きなたたかいをしてきたことに確信を持って、食料自給率の向上や農地法改悪を許さない運動をさらに進めよう」と呼びかけました。

 食健連の坂口正明事務局長が、G8サミットや汚染米事件を柱にした昨秋のグリーンウエーブ、派遣村への“命をつなぐ”助け合いなど1年間の多彩な取り組みを振り返りながら、09年度の運動方針を提案。「国際的にも注目されている食健連運動を、結成20周年にふさわしくさらに発展させよう」と述べました。

 地域や団体から22人が発言しました。このうち、農地法改悪をめぐっては、県内の半分以上の農業委員と対話した富山食健連や、村長に署名してもらうなど自治体・農協を訪問した福島食健連などから「対話すれば悩みや不安が出される。絶対に大企業の横暴な農業参入を許してはならないと思った」と報告。「農協が変われば地域が変わる」と発言した愛媛食健連は、地産地消や学校給食など今治市の取り組みを紹介し「私たちが動けば変えることができる」と発言しました。

 “食と地球をまもる産直”に取り組んでいる新日本婦人の会は「若いお母さんたちの関心事は子どもに安全なものを食べさせることだけでなく、みそづくりや農業体験を通じて、農業を社会の問題として考え始めている」と述べました。

 汚染米事件で発言したのは新潟食健連。「今までは門前払いだった自治体や農協も事前に署名を集めて待っていてくれた。12月の地方議会では、県内の4割を超える自治体でMA米中止の請願が採択されたが、はじめてのこと」と報告。

 21世紀の水産を考える会は農地法改悪の動きが漁業にも及び、「地元の漁協優先となっている漁業権を規制緩和しろ」という動きがあることを紹介し、「民主主義への攻撃だ」と警告しました。

(新聞「農民」2009.6.8付)
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2009年6月

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