「農民」記事データベース20090601-878-09

農と食への熱い思いを消費者に


 酪農家・自称「食料・農業・農村基本計画」運動家

   服部 博さん(神奈川県)

 看板で農業の現実知らせたい

 横浜市南区にある新興住宅地に200坪ほどの自家用の畑があります。酪農家で自称「食糧・農業・農村基本計画」運動家の服部博さん(83)は自宅の畑に看板を立て、農業と食の問題で自ら思うこと、考えていることを訴えています。

 「最近の農業情勢を反映して、言葉が少しきつくなっています」。服部さんが看板を立て始めたのは2007年12月のこと。500年ほど前から横浜の地で先祖代々受け継いできた農業ですが、農業は今や岐路に立っています。当初は「農を問う」として、食料自給率40%の日本を憂え、増えつづける輸入農産物、高齢化と後継者不足の現実を消費者に訴え、理解してもらおうというのが始まりでした。

 「農地は耕作者主義が基本。企業に明け渡してはならない」「農産物は再生産できる価格が絶対に必要」など、服部さんの主張はとどまることを知りません。その後、今日まで看板の中身を何度か更新しましたが、「収穫の秋に思う」「数字が語る日本の食事情」など具体的で農政の中身を鋭く批判する内容に変わっていきました。

畑の看板で食と農の再生を訴える服部さん(横浜市南区)

 酪農家でもある服部さんは1952年に横浜で乳牛を1頭飼い始め、その後規模を拡大し、69年に緑豊かで広大な神奈川県愛川町の宮ケ瀬に牧場を開設。82年にはファームサービス事業を始め、酪農を中心に体験農業ができる県内有数の牧場へと成長しました。

 体験牧場にして消費者と交流

 服部牧場は、100頭近くの乳牛、馬、羊など家畜のほか、アイスクリーム工房も造られ、連日、家族連れなどで大にぎわいです。年間、10万人が訪れています。現在、牧場の経営は息子の誠さんに任せ、博さんが牧場に顔を出すのは週に1回です。

 牧場について服部さんはこう説明します。「消費者のニーズに合わせて観光牧場化していますが、観光だけでなく基本は農業の継承です。牧場を都会の人に全面開放し、家畜に触れて、畜産・酪農体験を楽しんで、農業の現場を見てもらうことが目的です。今の農業は、危機にひんしているからこそ、消費者に理解してもらい、応援してもらうことが大事なのです」。この考えは、横浜市の看板の取り組みと共通しています。

家族連れでにぎわう服部牧場(神奈川県愛川町)

 お孫さんが本場ドイツでハム、ソーセージの加工技術を身につけ、牧場に戻ってきました。将来的には、牧場の恵まれた環境を生かして、生産から加工までできる農場にしたいと意気込みます。

 同時に、今の自分の気持ちを詩や俳句で表現したり、農民史を語ったりと、夢とロマンを追う日々が続きます。

(新聞「農民」2009.6.1付)
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2009年6月

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