「農民」記事データベース20090601-878-06

第25回JA全国大会 組織協議案を読む 》上《


表題と議案内容のあまりにも大きな乖離

 いま全国の農協組織では、今年の秋(10月7〜8日)開催予定の第25回JA全国大会にむけて、組織協議案の討議が行われています。

 協議案の表題は、「大転換期における新たな協同の創造―食料・農業・地域への貢献とJA経営の変革」とされており、何か大きな期待を呼び起こすようなテーマです。この表題について提案者(全中理事会)は、「米国発の金融危機に端を発する世界的景気減速を受けて、米国型の市場原理主義への過度の偏重を疑問視する動きが強まっている」として、「協同組合理念に基づく事業・活動が再評価される環境が醸成されている」と述べています。

 農協運動の存在意義を示すとき

 たしかに、アメリカ型市場原理主義の経済運営が大きな矛盾を生み出し、基本方向の大転換が求められている時に、利潤本位の資本主義経済に対抗して誕生した協同組合運動が、その存在意義を示す情勢にあると言えます。

 そして、この表題に合わせて考えるなら、いまの農協には次のような基本戦略が求められています。(1)穀物価格の高騰など新たな国際情勢のもとで、WTO協定を抜本的に見直すこと、(2)外需優先から内需拡大へ政策を転換するなかで、農業・農村を積極的に位置づけること、(3)生産コストを償う農産物の価格形成にむけて農業政策を見直すこと、(4)大規模農家などに「担い手」を限定しないで、すべての組合員を大切にした農協運営を実現すること、(5)組合員の要求実現のために、金融・共済事業にかたよった農協経営のゆがみを改善すること、(6)食糧主権を確立するため、国民運動を呼びかけその先頭に立つこと、などです。

東京・大手町に新築したJAビル(中央)は、経団連ビル(その右)とつながっています

 財界主導の「構造改革」を推進

 ところが、このすぐれた表題にもかかわらず、議案本文の内容は「大転換期」どころか、「農協の赤字経営を改善するため」という理由から、広域合併や事業・支所の統廃合など、これまでの財界主導の「構造改革」を推し進め、農協職員の人減らし合理化をますます強めるものとなっています。しかも、いま最大の問題となっている農林中金の資金運用による巨額の損失については、経営責任を含めひと言もふれられていません。
(つづく)
(Y・H)

(新聞「農民」2009.6.1付)
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2009年6月

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