「農民」記事データベース20090601-878-03

09年度 補正予算

総選挙目当ての“バラマキ”の声

関連/農地法改悪案を廃案に


〈農林漁業関連は―〉

農地法改悪見越し大企業“支援”
レタス1個2500円の植物工場にも手厚く

 衆議院は5月13日、本会議を開き、15兆円にもおよぶ2009年度補正予算案の採決を強行し、自民・公明両党の賛成多数で可決。審議は参議院に移りました。

 この補正予算案は、「景気対策」と称して大企業には大型公共事業などで大盤振る舞いする一方、巨額の借金のツケを消費税増税で国民にまわすという、選挙目当てのバラマキ予算です。

 このうち、農林漁業予算は約1兆円。その中身を見ると…。

 企業の農業参入に大きく道を開く農地法改悪案が、国会で審議中ですが、その成立を見越して、農地の集積を加速させるための経費を盛り込んでいます。約3000億円を投ずる「担い手への農地集積」です。これは、今後3年間(最長5年間)に小規模農家や高齢農家が農地を差し出せば、10アールあたり年間1万5000円を交付するもので、いわば“手切れ金”です。また、約1200億円の予算で、米粉用や飼料用米の新規作付けに10アールあたり2万5000円を上乗せします。しかし09年産の米価は、大手量販店の値下げ競争や政府がルールどおりに備蓄用に買い上げないことなどから、このままでは“大暴落の危機”とも指摘されています。主食用の米価が経営的に安定して、その土台があってこそ“支援策”が生きてくるものです。米の安定した需給に責任をおわず、市場まかせを変えないのでは、安心して“フル活用”もできません。

 さらに、民間企業が人工光(発光ダイオード)や大規模養液栽培でレタスなど野菜を生産する植物工場を導入する際の支援策(設備投資の50%助成)として、96億円の予算を用意しています。生産コストを3割縮減し、全国に50ヵ所ある植物工場を、3年後には150カ所にする計画です。農水省や経済産業省は「季節や天候に左右されず安定供給」「土地を選ばない」などと利点をあげ、麻生首相も植物工場を視察するなどの力の入れようです。

冷暖房完備で高コストの植物工場(農水省のホームページから)

 しかし、経済産業省のロビーに設置したわずか13平方メートル、高さ3メートルのモデル工場の設備投資額は600万円で、1カ月の水道光熱費は10万円です。レタスの1カ月の生産量は40株といいますから、1株の値段はなんと2500円。大量の電気や水を消費する点でも、地球温暖化防止に逆行します。資本に支えられた民間企業でなければできない植物工場に、なぜ100億円近くの予算を当てなければならないのでしょうか。食糧を増産するなら、価格保障など農家の意欲を引き出す施策に予算を使ってほしいものです。


農地法改悪案を廃案に

福井と岡山の農民連

県農業会議など関係団体に要請

画像 外資系など一般企業にも農地利用を認める農地法改悪案の問題で、福井県農民連の玉村正夫会長ら7人は5月15日、政府や関係機関に対して廃案の建議を行うよう、県農業会議に要請しました。

 玉村会長ら参加者は、改悪案について「お金のある大企業に優良農地が集積され、政府が育成している認定農家や集落営農組織さえ、経営がもっと大変になる」と警告しました。また、政府が同法案の「改正」目的として、耕作放棄地の拡大を防ぐことをあげている点についても「耕作放棄地は条件不良な耕地だ。(営利を求める)企業がそんなところを耕作するはずがない」と指摘しました。

 応対した杉本義則事務局長は「国も、企業の横暴をどう防ぐかで苦慮している」と答えるにとどまりました。

 農民連岡山県連は5月8日、県農林部に対し「農地法の改悪反対」を申し入れるとともに、農地法が「改正」されても、県下の農家が農業を続けていけるよう、県政の充実を求めて交渉しました。

 対応した農林部の農村振興課長は「県としては、これまでの農家支援の政策を変更する考えはない。今後も、家族経営農家の支援策を充実させていきたい」とコメントしました。岡山県連は、県農業会議所や農協、自治体にも申し入れ活動を広げていくことにしています。

(新聞「農民」2009.6.1付)
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2009年6月

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