「農民」記事データベース20090518-876-08

映画紹介

アメリカ大規模農業の実像描いた
ドキュメンタリー映画「キング・コーン」

日本の農と食の将来を考えるきっかけになる


 アメリカ中西部の大規模農業の実像を象徴的に描き出したドキュメンタリー映画『キング・コーン』が公開されました。農業や食生活について考えるきっかけとして、おすすめの一本です。

 「君の身体はトウモロコシでできている」

 東海岸の大学を卒業し社会人になろうとしていたイアンとカートは、自分たちの食生活を見直してみたいと専門の研究機関を訪ね、髪の毛の成分を分析してもらって驚きます。「トウモロコシなんて、独立記念日のバーベキューで食べるくらいなのに…」

 そこでスーパーマーケットで調べてみると、棚にあふれる清涼飲料水や加工食品の原料には、トウモロコシがふんだんに使われていました。肉類の元になる家畜のエサにも。2人は、その正体を確かめようと、自らトウモロコシを栽培することを決意します。

 アイオワ州の田舎町で1エーカー(約40アール)の畑を借り、近隣の農家の助言を得ながら、体当たりで農業に挑戦した2人。大型トラクターを操り、畑にアンモニアを注入することから始めます。そして3万粒の種まきはわずか18分。農作業は思いのほか簡単でした。遺伝子組み換えのトウモロコシは、化学肥料や除草剤を浴びながらぐんぐん成長します。

 ところが、実ったトウモロコシを試食してみて、2人はまた驚きます。

 「まずい!」

 そう。彼らの育てたトウモロコシは、加工専用の多収量品種だったのです。

 2人はトウモロコシの行方を追う旅に出ます。そこで見たものは…。

2人が育てたトウモロコシは「まずかった」のだが…(提供=エスパース・サロウ)

 工業生産の一部と化したアメリカ農業の巨大な生産力と、それが人々の食生活や健康にもたらす影響が、リアルに映し出されます。また、それを支える農家の経営が、実はアメリカ政府からの補助金によってはじめて成り立っていることも。

 日本の穀物自給率はわずか27%。国内の米の生産量の2倍にあたる1600万トン以上のトウモロコシを、主にアメリカから輸入しています。もしかして、あなたの身体もトウモロコシ?

 日本の食生活と農業の将来を考える上でも、具体的な示唆がたくさん盛り込まれた作品です。

 東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムにて上映中。5月以降、名古屋、京都、大阪、神戸、新潟、那覇でも上映予定。詳細は公式サイト(http://www.espace-sarou.co.jp/kingcorn/)で。


 キング・コーン

(監督・制作:アーロン・ウルフ、共同制作:イアン・チーニー、カート・エリス/07年/アメリカ/90分)

(新聞「農民」2009.5.18付)
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2009年5月

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