「農民」記事データベース20090518-876-02

農地法改悪法案の可決に強く抗議する

2009年4月30日 農民連・白石淳一会長が談話


 一、4月30日、衆議院農水委員会は農地法の一部を改正する法律案を一部修正して可決した。法案は一部修正したにせよ、企業の農業への参入を原則自由化し、農地の所有にまで道を開く原案の歯止めにはなりえないものであり、到底、容認できない。法案に賛成した自民党、公明党、民主党に強く抗議する。

 一、日本農業の根幹を左右する農地制度の根本的な改変は、広く国民的な議論と合意が求められる。しかし、農地法改正案は多くの国民に十分に知らされておらず、ましてや自民党・公明党、民主党の合意による修正案に至っては、国民は知るすべもない。このような状況で可決したことは国権の最高機関として許されるものではない。

 一、修正では、耕作者主義を全面的に放棄した政府改正案第1条に「耕作者自らによる農地の所有が果たしている重要な役割も踏まえつつ」「農地を効率的に利用する耕作者による地域との調和に配慮」「耕作者の地位の安定」などの文言を挿入した。しかし、耕作者主義の核心である「農地は耕作者自らが所有することを最も適当である」という条文は削除されたままである。修正案は、大企業や多国籍企業までも「耕作者」に含めて、その「地位の安定」をはかるものであり、政府原案と本質において何ら変わるものではない。

 また、大企業などへの農地貸し出しの自由化にあたって、法人・企業の業務執行役員のうち1人以上が農業に常時従事することと、貸し出しの許可にあたって農業委員会が市町村長に通知することが義務づけられ、市町村長が意見を述べることができることが付け加えられた。これらは、ないよりはましとはいえ、企業参入の弊害を解消するものにはなりえない。賃貸借期間を50年にすることや、標準小作料制度の廃止に修正は及んでいない。

 一、農業が衰退し、耕作放棄地が後を絶たないのは歴代の自民党政治による農政の結果であり、責任を農地法に転嫁するのは本末転倒である。

 今、求められるのは、政府・与党がこれまでの農政の失敗を反省し、食料自給率を向上させる農政に転換することである。そして農業で生活し、営農が継続できる価格保障を軸にした政策を軸に、担い手の育成・確保、耕作放棄地対策の強化に踏み出すことである。それはまた、食糧危機への対処と安全・安心な食糧の確保、地球温暖化防止と内需型経済への転換にも大きく貢献する道である。家族経営農業を否定して利潤第一主義の大企業に農業と農地を委ねることは、農業の多面的役割を放棄し、農業の持続性に重大な障害をもたらし、国民にとって失うものがあまりにも大きいことを改めて主張する。

5月1日はメーデー。岡山中央集会には、農民連から8人が参加。「デコレーション部門」で、昨年は“俵神輿(みこし)”をかつぎ最優秀賞でしたが、今年は「農地法改悪反対」で、優秀賞に輝きました

 一、衆議院の農水委員会で可決されたとはいえ、本会議は連休明けに先送りされ、参議院の審議も残されており、今後のたたかいがいよいよ重要である。

 この間の農民連・食健連を先頭にした法案阻止のたたかいは、短期間に政治を大きく突き動かしている。宣伝が全国で展開され、団体署名、農業委員署名も急速に広がっている。反対建議を採択する農業委員会も相次いでいる。改悪のねらいが明らかになればなるほど国民の批判が高まり、「景気が悪くなったといって派遣労働者を切り捨てる大企業に農地は委ねられない」「もうけ本位の大企業が参入したら、耕作放棄地が増える」などの怒りの声が急速に広がっている。当初、政府・与党案に肯定的であった民主党が修正に動かざるをえなかったのも、世論の高まりを反映したものである。

 農民連は、すべての農家と農業関係者、国民に農地法改悪の持つ危険なねらいを明らかにし、農地制度の改悪を阻止するために全力をつくすものである。

(新聞「農民」2009.5.18付)
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2009年5月

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