関東生乳品質改善共励会
「最優秀賞」を受賞した
群馬県農民連 住谷 龍太さん(49)
関東地方の酪農家3373人が参加した乳質コンテスト「関東生乳品質改善共励会」で、群馬県農民連会員の住谷龍太さん(49)が、最優秀賞(10人が受賞)に輝きました。赤城山の南西麓にある住谷牧場を訪ねました。
よい牛乳は自給飼料主体のエサがいい
快適な施設で牛が健康だから
特別な秘けつなんてないよ
高原の遅い春を迎えた住谷牧場。春風の吹き抜ける爽やかなフリーストール(牛がつながれず、歩きまわれる)牛舎で、牛たちがのんびりと反すうしています。「いやぁ、特別な秘けつなんて…。家族経営で、自給飼料を主体にした、オーソドックスな酪農です。受賞はごほうびみたいなもので…」と、住谷さんは頭をかきかき謙そんしきり。
現在、住谷牧場は、搾乳牛50頭、育成牛30頭、肥育牛5頭という経営規模です。「秘けつはない」といいますが、「自給飼料主体のエサがいい、というのはあると思う」と自信を持って言います。仲間6人と共同して26ヘクタールの農地で、夏はデントコーン、冬は乾草を栽培。たい肥もすべて農地に循環できています。「わが家の酪農は、この畑の自給飼料がすべての基盤です。逆に言うとこの条件でうまく循環する範囲が今の規模ということ」と住谷さん。
「いい牛乳が出るのは、とにかく牛が健康だから。乾草と粗飼料をたっぷり与えていると、高価な購入飼料やサプリメントも使ってないけど、大きな事故(牛の病気やケガ)もない。1頭あたりの年間平均搾乳量も去年は9000キログラムになって、乳量と乳質のバランスもとれています」とサラリと言った後で、「理想は山の中の小さな牧場。実際はその通りにはいかないんですけど」と笑いました。
施設・機械にいろいろ工夫
しかし、ここに到達するまでには苦労も多かったと言います。じつは住谷さん夫妻は通い酪農。5年ほど前に、自宅と畑のある高崎市内から、この赤城山麓に牛舎を移転し、自宅と畑と牛舎を行き来しながら酪農を続けています。「移転前は狭いし、人家も近くて、それに比べたら今は夢のよう」と奥さんの洋子さん。
現在の牛舎には牛たちが快適に暮らせるよう、さまざまな工夫がこらしてあります。「なるべくお金をかけないで、自分たちに合ったものにしようと思って。ほら、これがわが家特製のミルキングパーラー(搾乳の施設)。枠は鉄骨屋さんに頼んで、180万円でできました。ミルカー(搾乳の機械)は、スタンチョン(つなぎ飼い)用のもの」と、簡素にして要を得た搾乳システムを案内してくれる住谷さん。
大きな牧場ではコンピューター制御での自動給与が当たり前の配合飼料も、住谷牧場では住谷さん夫妻が、搾乳中に1頭1頭、牛の様子を観察しながら与えています。
飲む人を感動させる“甘さ”
「飼料や資材は高騰しているし、乳価は低いままで、いま酪農は離農が相次いでいます。ウチも“受賞”が目的ではなくて、少しでもいい乳質の乳を搾って、少しでも乳価を高くしておきたくて努力してきたということなんです。年間にすると100万円近く違ってきますから」と、受賞を手放しでは喜べない酪農の危機を、住谷さんは切迫感をもって話してくれました。
さて、自慢の牛乳の味は…「甘い!」。飲む人を感動させるやさしい甘さです。臭みもなく、サラリとしたのどごし。「やっぱりおいしいと言ってもらえるのが、一番うれしいですね」。こころなしか、牛に似た笑顔になった住谷さん夫妻でした。
(新聞「農民」2009.5.4付)
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