「農民」記事データベース20090504-875-06

警告する科学者たち

加速する地球温暖化

深刻化示す研究続々

関連/温室効果ガス排出 166事業所で日本の半分

 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の科学者たちが、「このまま地球温暖化が進むと、砂漠の拡大、水不足や洪水の多発、海面の上昇、生物種の絶滅が発生する」という衝撃的な報告書を出したのが、2007年。その後も温暖化の研究はますます進み、最近になって温暖化がさらに深刻化しているという研究報告が相次いでいます。


 手に負えない悪循環の恐れ

 IPCC報告書の有力な執筆者の1人であるスタンフォード大学のクリストファー・フィールド教授は、今年2月にシカゴで開催されたシンポジウムで、地球温暖化が従来考えられていた予測をはるかに上回るスピードで進んでいると報告しました。

 フィールド氏は、(1)2000年以降の世界の温室効果ガスの排出が、90年代の3倍のスピードで増加している、(2)北極圏の永久凍土には炭素が大量にため込まれているが、温暖化が急速に進んで溶け出しており、温暖化をさらに加速させる恐れがある、(3)山火事や伐採などにより熱帯雨林が減ると、大気中のCO2濃度が増える、などの内容を最新のデータを用いて報告。教授は「早急に対策を取らねば、今世紀末にかけて人類の手に負えない悪循環が起きる恐れがある」と警告しました。

 同大学のホリー・ギブス氏は、世界の衛星画像を解析し、「バイオ燃料用作物を栽培するために森林が伐採されている。バイオ燃料の利用が増えると、温暖化を加速する恐れがある」ことを報告。「バイオ燃料で車を走らせるのは、森を燃やしているのと同じ」と警告しています。

 南極や北極の氷溶けている

 「北極や南極の氷が溶けている」との報告もあります。国連機関の一つである「世界気象機関(WMO)」は2月、「北極やグリーンランド、南極の氷が予想を上回るペースと規模で縮小しており、海面水位が上昇するとともに、気候変動に拍車をかけている」との調査報告書を発表。これまでの研究では、グリーンランドと南極の氷は、ごく小規模な溶解の兆候はあっても、だいたい安定していると見られてきましたが、今回の報告書はこれを覆す内容です。

 水と食料が不足するとの警告も

 農業と食糧生産にかかわる警告も。「国連環境計画(UNEP)」は、今年2月、「2050年までに、気候の変化や土壌の劣化、水不足、外来生物の侵入などの複合的な影響によって、世界の食料生産が最大で25%減少する可能性がある」との報告書を発表しました。

 UNEPは、今後数十年間で、世界の人口は90億人を超える一方、食料価格は30〜50%上昇すると推計。より大規模な穀物在庫が必要と指摘しています。

 またアメリカの研究チームが、気候変動が原因になって、人口が集中する大河川の多くで水が少なくなっており、将来の食料・水供給への重大な脅威となると発表してています。


温室効果ガス排出
166事業所で日本の半分

気候ネットワーク調べ

画像 日本の温室効果ガスの大部分が、ごく限られた大企業によって排出され、さらにその割合が大幅に増えていることが、環境NGO「気候ネットワーク」の分析で明らかになりました。

 気候ネットワークが、4月3日に政府が発表した2007年度の温室効果ガスの大口排出事業所の排出量を分析したところ、88カ所の発電所と18製鉄所だけで、日本中の温室効果ガスの42%を排出。さらに上位の20事業所だけで20%を排出していることがわかりました。これらの事業所では、石炭を大量使用しているのが特徴です。

 日本政府はこれまで、温室効果ガスの削減対策を日本経団連の「自主行動計画」まかせにしてきましたが、自主行動計画は単なる努力目標で、守れなくても一切罰則がありません。大口排出源である大企業の削減を義務化する対策が、いまあらためて求められています。

(新聞「農民」2009.5.4付)
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2009年5月

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