どうなっているの? 日本の水産業 =11=
外国産進出で魚食が変わる
魚食は客と魚屋がともに作った
日本経済の国際化は魚の小売業を大きく変化させ、図のように、消費者は魚屋さんなどの小売店から、最近ではスーパーで魚を購入するようになってきました。このことが、「日本の魚食」を大きく変えました。
国内水産物が主流の時には、町の魚屋さんが季節ごとに魚を仕入れ、刺し身を作り焼き魚を用意し、消費者に国内産の魚を提供してきました。地域ごとに魚の食べ方があり、家庭ごとに魚料理があり、魚食文化は、お客さんと魚屋さんが共同して作ってきたといえます。
ところが1990年代に入り、輸入水産物がスーパーに並べられるようになると、売り場面積が魚屋さんの10倍近くに広がりました。カニやサケ、イカなど外国の冷凍品を入れたガラスケースがあり、次いで塩づけのサケ、イクラ、カズノコなど魚卵の塩干品のケース。その隣にはマグロ、カツオなど解凍した切り身、そして刺し身の盛り合わせです。そのほかにカマボコやさつま揚げ、昆布、わかめ、アサリ、シジミなど本当にきらびやかです。その品数はいくつになるでしょうか。魚屋さんの7、8軒分はあるでしょう。
消費者が調理工夫する余地なく
しかしよく見ると、この陳列品はほとんど食べ方が決められています。消費者が工夫し調理する余地はほとんどなく、季節感も薄くなっています。例えば、刺し身は養殖のブリや冷凍マグロの赤身、アジのタタキなどで、一年中同じです。冷凍品や塩干品、加工品も同じで、季節による魚はサンマくらいです。
そのうえ、最近では外食化がより進んでいます。自分の食事を他人に預け、家庭の味、地域の独特な食べ方がなくなり、季節感のない単純な食生活になっているようです。自分や家族のために調理しない食事、資本に売り渡した食事では、決して新しい食文化は生まれないし、家庭の温かさも日本古来の食文化も継承することはできないでしょう。
(21世紀の水産を考える会 山本浩一)
(つづく)
(新聞「農民」2009.3.23付)
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