危機打開へ
さらなる乳価引き上げ
飼料・資材高騰への補てんを
農民連、畜全協が農水省交渉
関連/畜全協と北海道農民連 中央酪農会議へ要請・懇談
飼料代、肥料代の高騰など依然として苦境が続く畜産・酪農家。2009年度の畜産・酪農対策の方向性を決める食料・農業・農村政策審議会畜産部会(3月5日)の開催を前に、農民連と畜産農民全国協議会(畜全協)は2月24、25の両日、農水省交渉、中央酪農会議への要請を行い、乳価引き上げ、飼料・資材高騰への補てん、畜産危機の打開を求めました。北海道から上京した8人の畜産・酪農家も厳しい実態を訴え、畜産・酪農経営を守るための対策をとるよう要請しました。
24日の農水省との交渉では、北海道の酪農家が「現在の経営を維持するためにも、これまでの負債を軽減するためにも生産者補給金の大幅な引き上げが必要だ」と強く求めました。
農民連が、牛乳の価格を決めるにあたって、メーカーと生産者団体の交渉だけにゆだねず、政府が強く関与するよう求めたのに対し、農水省は「牛乳を扱う指定団体同士が決めることが前提で、話し合われた結果を尊重する」と、他人事のような答弁に終始。「国が関与しないのが時の流れ。乳価のさらなる引き上げで消費が落ち込む」などと回答しました。
これに対し農民連は「市場原理に任せるのが時の流れか」「市場原理に任せてきたことが今の危機を招いたのでないか」「消費の落ち込みは、景気の悪化、雇用と労働の問題だ」と批判が相次ぎました。
さらに「3月から乳価が10円引き上げられることは重要な前進だが、この程度の引き上げでは、酪農家の危機は打開できない。30円以上の値上げが必要。飼料・資材高騰分を補てんする対策を実施せよ」と要求しました。
続いて農家が「700戸だった農家はいま140〜150戸。酪農家は24戸だけになった。子どもに後を継げと言えない。町から酪農家がいなくなる」(遠別町)、「320戸の酪農家のうち後継者がいるのは4割程度。若者がどんどん町から離れ、このままでは町がなくなってしまう」(標茶町)などと切実な実態をぶつけました。また「安く消費者に提供することをうたったメガファームだが、『とてもこの価格ではやっていけない』という声が寄せられている」などの現状を述べました。
最後に農民連は「産地がだめになれば、国民の生活に影響がでる。『市場原理にまかせる』のでなく、これまでの枠を超えた対策を」と求めました。交渉を通じて、従来型の答弁に終始した農水省ですが、「予断をもたずに、農家の立場にたって検討する」と答えるなど、今までの枠を超えた対策を示唆する場面もありました。
中央酪農会議へ要請・懇談
終始なごやか、率直に意見交換
畜全協と北海道農民連は25日、中央酪農会議を訪れ、要請・懇談しました。
農民連が「飼料や資材の高騰で、酪農家の離農が進んでいる。生産コストに見合う価格が保障されないと、経営の展望が開けない。ぜひ力を貸していただきたい」と切り出すと、応対した門谷廣茂専務は、「酪農経営の厳しさはよく認識しており、酪農家が再生産可能な乳価になるよう努力している。3月から乳価が10円値上げされるが、まだ農家の手元に届いておらず、酪農家の離農は深刻だ」と同意しました。
また今後の乳価の見通しについて、「景気悪化で乳製品需要が減る一方、飼料価格は下がってきており、3月の10円値上げを機に厳しいマスコミ報道になるのではと警戒している。しかし10円以上の値上げが継続できるよう努力しているところだ」と述べました。
農民連側から「乳価設定に国が関与せず、メーカーと生産者の交渉まかせという現在の乳価制度が、低い乳価の原因になっているのではないか」と投げかけると、「ご指摘のとおり、生産者団体の交渉力が弱いためにコストが乳価になかなか反映できない状況となっている。しかし価格や生産量を国が統制するやり方がいいのかどうか」と率直に回答しました。
農民連側から酪農家の厳しい生産現場の実態が語られると、門谷専務は「飲用乳は国産以外はできず、消費者の酪農家への共感も強い。国内の酪農家を守っていきたい」と回答。自給率の低いチーズ、バター、クリームといった加工原料乳をめぐる情勢なども出し合い、懇談は終始、率直な意見交換が続きました。
(新聞「農民」2009.3.9付)
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