「農民」記事データベース20090209-863-06

燃える決意表明に熱い拍手と共感

農を守り拓(ひら)くため
ヤングパワー全開!

農民連第18回大会での発言から

 農民連大会では、全国から53人が発言。ある参加者が言いました。「テレビでオバマが演説していたけど、大会の発言こそ全世界に生中継してほしいなあ」―4人の若者の発言(大要、一部補足)を紹介します。


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新規就農は厳しかった

農民連の救いの手に勇気が

北海道農民連

 佐藤健司さん(27)

画像 意欲に満ちあふれた新規就農者に大きく立ちはだかる壁。それは、政府の農業政策だった――。 北海道音更町で昨年春に新規就農し、小麦、豆類、バレイショなど畑作に励んでいる佐藤健司さんの発言です。

 立ちはだかる農政の“壁”

 もともと実家は酪農を営んでいましたが、10年前の父の死去を機に一度は農業を断念しました。農地は貸し出すことにし、私は大学で学ぶため、上京しました。

 農業に目を向ける一つのきっかけになったのは、2年前の結婚でした。家庭をもつことで、「自分が生まれ育った土地で家族とともに一生過ごしたい。農業で、目に見える形でものを作って消費者に届けたい」という強い思いが芽生えました。

 北海道に戻り、1年の実習をへて、期待を膨らませながら昨年春に就農。ところが、飼料用の輸入小麦より安い小麦価格の実態にがく然としました。これでは作付けの経費を回収できない、とても農業は続けられない、と。

 さらに、こうした不足分を補うのが国の農業支援策のはずです。国の支援策を受けようと行政に相談しましたが、私の場合、品目横断的経営安定対策では、後継者とは認定されても、新規就農者としては認められない、というのが当初の行政の見解でした。

 「なぜ国は担い手を制限しようとするのか。これでは、日本人の胃袋を支えている北海道の農業がだめになってしまう。国は、農業よりも第2次産業、自動車をどれだけ売るかということしか頭にないのでは」。怒りがわいてきました。

 ここで、救いの手を差し延べてくれたのが北海道農民連です。粘り強く道農政事務所とかけ合い、見事に担い手として認められ、必要な支援を受けることができるようになりました。新規就農者としてスタートラインに立つことができたのです。

 
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北の広大な大地をトラクターで耕す佐藤さん(北海道音更町)

 私は、このことを通じて、少数でも声を上げることはむだではないことを教えられました。農業に夢を持っている人がたくさんいます。この人たちを救えるのは、国・行政ではなく、農民連です。(大きな拍手)

 就農して1年。地域の人たちに支えられながらやってきました。今度は、地域への貢献として、ナタネの作付けをもっと増やしたい。将来的には、妻と2人でカフェや雑貨屋も経営し、楽しみながら農業を続けたいです。


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国際活動から地域活動に

運動の中で成長できました

静岡県農民連

 杵塚 歩さん(29)

画像 就農してから5年、農民連運動の中で成長してきたなあと、あらためて実感しています。

 海外で日本農業のことを話すと…

 これまで、ビア・カンペシーナの会議に通訳として参加する機会が何度かありました。そこでは「日本にも農業があるんだ」ということを聞かれます。そして日本の農業のことを話すと、似たようなことがほかの国でも起こっていることに驚きます。国際活動は、自分たちがどういう位置に立っているのか、もう一度確認するための活動だと思っています。地域にもどって自分で何ができるのか、ずっと考えてきましたが、少しずつその方向が見えてきました。

 昨年2月から、地域の若者に呼びかけてみそづくりを始めました。はじめは農家の青年に声をかけようとしましたが、なかなかみつからなくて友達やその友達と広がり、8人くらいになりました。みそづくりをしながらいろんな話をしていく中で、休耕田を借りられることになり、若者で米づくりをしようということになりました。農家の人に教えてもらいながら、田んぼづくりから始めて、無農薬栽培なのですべて手作業です。若者どうし汗を流しながら、腰をかがめてつらい作業もありましたが、結局40人に増えました。このうち、農家は私一人であとはみんな非農家、3分の2が女性です。

画像 昨年12月、静岡県藤枝市の田んぼで、収穫を喜び合いながらもちつきと食事交流会が開かれました。参加者からは「田んぼを通 じてつながっていけるってすごいね」「来年の田んぼが楽しみ」「いろんな加工品に挑戦したい」などの声が出され、田んぼを通 じて青年どうしの新しいつながりが広がっています。

 農業の豊かさを幅広く伝えたい

 農業の豊かさを農家だけのものにしないで、幅広く世代を超えていろんな人に伝えていきたい。こういう取り組みも一人では限界があります。地域の農民組合や農民連に加わることで、本当に運動がひろがります。人と人がつながっていくことで発展の可能性が無限になるんだな、と強く感じています。


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「百姓百品」産直で多彩な活動

税金、出荷…何でも相談で大忙し

愛媛県農民連

 西岡真人さん(31)

 去年の4月から、人口1万人あまりの中山間地の小さな町(西予市・旧野村町)で、「百姓百品」という直売所組合の事務局長をしています。私自身は農家出身でないのですが、直売所の魅力にとりつかれ、仕事ざんまいの毎日です。

 
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松山市内にある生協のインショップ

 現在の組合員数は450人。そのほとんどがお年寄りです。75キロメートル離れた松山市内の生協店舗内のインショップが2カ所と、地元の本店の3店舗を経営しているほか、2月からもう1店舗増える予定ですが、しばらくは野菜不足に悩まされそうです。また、昨年10月からは株式会社の農業生産法人を立ち上げ、農地を借りて、産直野菜の生産にも取り組んでいます。

 農民連の呼びかけに応えて、昨年からは免税軽油にも取り組んでいます。愛媛県連の副会長を招いて講習会をしたり、希望者による記帳や、学習会を数回行って、免税申請に取り組みました。

申請場所が遠く、高齢者が多いため、代理申請を行うことにしましたが、最初は税務署から「代理申請は受け付けない」と門前払いになってしまいました。大急ぎで県連の大野書記長に連絡をとったところ、「国民には代理申請の権利がある」と県交渉で取り上げてくれ、代理申請が認められることになりました。現在、申請利用者は10数名にのぼり、「助かった」とたいへん喜ばれています。希望者もますます増える見込みです。

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西岡さん(中央)と徳島の松永顕治さん(左端)、香川の金江ちひろさん(右端)

 自治体との交渉でも成果

 昨年の対県交渉では、今後も「百姓百品」を農業生産団体として対応すると約束させました。

 また、「百姓百品」では地元の小中学校の給食にも農産物を出荷しています。昨年11月には、地元の小学5年生の授業で、社長の和気数男さんが農業情勢などの話をしました。この授業をもとに、年末の発表会では5年生が演劇にして、農業問題や環境問題の大切さや、問題解決にむけて地球規模での共同行動が必要だと訴えて好評でした。

 このように「百姓百品」では、「農民の苦難あるところに、農民連あり」の言葉どおり、頼りになる農民連をめざして、さまざまな活動に取り組んでいます。今後は、農産加工品など「ものを作る」ことや、税金申告にも力を入れていきたいと考えています。そして全国の農民連とともに、中山間地の農業を発展させていきたいと思います。


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開発で壊される農地

“自然を守れ”と徹底抗戦

愛知県農民連

 野田留美さん(35)

 私も含め家族4人で経営する野田農場は、名古屋市守山区中志段味(なかしだみ)にあり、米やトマトなど野菜を生産しています。農場周辺にはクロガネモチの巨木を中心に自然豊かな生態系が残っています。名古屋市には36人の認定農業者がいますが、そのうち4人は私たちで、6人いる青年農業士の中で女性は私1人です。

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野田農場のみなさん、左から3人目が留美さん

 通告なしで農地めちゃくちゃに

 こういう農家をいま、つぶそうという事態が起こっています。昨年12月18日朝8時、何の通 知もなく、突然ブルドーザーなど10台以上の重機と数十人の作業員が押し寄せ、麦を作付けしてある農地をめちゃくちゃに破壊し埋め立てました。これは、土地区画整理組合と名古屋都市整備公社が大手スーパーを誘致するために勝手に強行したもので、区画整理事業を指導する市の住宅都市局も知らされていませんでした。(会場から「ひどいことをするねえ」の声)

 14年前に設立された区画整理組合の事業が進む中で、厳しい立ち退きを迫られていましたが、こうした“実力行使”は前例がありません。

 私たちはただちに抗議し、市に対して「違法行為」を中止するよう要請しました。市の職員が驚いて駆けつけ「工事停止」と「原状回復」の命令を出しましたが、工事が停止したのはやっと正午ごろで、「原状回復」はなんと拒否。24日には裁判所に執行停止の申し立てを行いました。

 いま、農場と周辺の自然を守ってほしいと「残す会」を立ち上げ署名を呼びかけています。ぜひ、「応援メッセージ」を書いてください。こういうことが起こっていることを多くの人たちに知らせてください。

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めちゃくちゃにされた農地

 たちまち届いた応援メッセージ

 その後、野田さんからメールが届きました。「163人から『応援のメッセージ』をいただき、本当にありがとうございました。帰りの新幹線のなかで、一枚一枚読んでいくうちに、涙がこぼれそうになりました。

 『ものを作ってこそ農民!』といっても、その土台の農地が開発でどんどんつぶされている現状があります。今、この問題に取り組むことは、きっとほかの開発で苦しんでいる人たちにも役に立つことだと、私は信じています。これからも応援よろしくお願いします」

 詳しくは、ホームページから。(野田農場で検索してください)

(新聞「農民」2009.2.9付)
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2009年2月

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