どうなっているの? 日本の水産業 =9=
安い加工品輸入で国内業者破産
輸入加工品などには規制なし
200カイリ体制の本格化による遠洋漁業からの撤退、マイワシ・マサバ資源の崩壊による沖合漁業の衰退で、国内の漁業生産量
は1988年の1200万トンから1998年の680万トンへ減少、ついには2006年の570万トンへと凋(ちょう)落しました。一方、その減少分を補うように輸入量
は増加し、2001年には380万トンにも達し、自給率を50%台まで押し下げました。
これほど輸入量
を押し上げた要因は、単にマグロやサケ・マスの遠洋ものや、加工原料のアジ、サバ、イカの輸入増だけではありません。表からわかるように、その多くは調整品と称した加工品、そしてすり身や冷凍品です。国内の漁業生産者を守るため魚種ごとに輸入規制量
が定められていますが、調製品などにはその規制がありません。そこで、日本の多くの食品会社が海外で加工し、それを輸入するようになっていきました。
ウナギはその養殖から白焼き、蒲焼、缶詰へと一貫した生産が、台湾や中国、東南アジアに広がっています。エビも同様です。また、干物生産では、カナダやノルウェーなど北海のアジやサバ、シシャモが冷凍されて中国へ持ち込まれ、そこで加工され日本に輸出されています。そこでは、自動車工場の生産ラインのように徹底的に衛生管理された工場で、数百人もの現地の若い女性たちがエビの頭をとったり、蒲焼をつくっています。
水産業の明日は“地獄”のようだ
このようにして、水産業における国際化は、はじめは漁業生産者に大きな被害を及ぼしましたが、その後は安価な輸入加工品によって、零細な国内業者は次々に姿を消していきました。
最近では、日本より中国やロシア、ヨーロッパなどの水産物消費が増え始め、ついに日本は“買い負け”する状況でしたが、世界的な金融危機により、事態は一変。諸外国の需要は止まり、円高も手伝って国際的な水産物需給は“日本の一人勝ち”だそうです。その上、国内の需要の落ち込みを想定し、徹底した安売り作戦をねらって買いたたいているそうです。国内の水産業者は、また窮地に追い込まれそうです。水産業の明日は、“地獄”のように見えます。
(21世紀の水産を考える会 山本浩一)
(つづく)
(新聞「農民」2009.2.2付)
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