WTOは「食糧主権」損なう合意をするな国連人権委のドシュッテル報告書
いまの世界貿易優先のドーハラウンドは、食糧危機も気象危機も解決することができない―「食糧に対する権利」に関する国連人権委員会の特別報告者、オリビエル・ドシュッテル氏が初めてWTO(世界貿易機関)へのミッションとして調査に入り、WTOが「食糧への権利」を順守しているかを検証した中間報告を昨年12月17日に発表しました。
食糧危機と気象変動を過小評価昨年5月に、前任者のジャン・ジグレール氏に代わって就任したドシュッテル氏は、初の公式ミッションとしてWTOとその主要加盟国から派遣されている大使たちと話し合い、報告をまとめました。報告では、WTO交渉で論議されてきた国際的な農産物貿易システムが、当面する食糧危機と気象変動についてあまりにも過小評価していること、貿易の自由化が各国政府の「食糧に対する権利」を守る能力を大きく損なわせていることを強調しています。 とくに、各国が食料安全保障のために行っている国際貿易への依存強化が、多国籍企業の支配力を増大させ、国内の農業生産を疲弊させ、食糧に対する権利を脅かしているばかりか、遠距離輸送によって環境にも悪影響を与え、生産の持続的発展を阻害していることを厳しく告発しています。
4つの新ビジョンを各国に提示ドシュッテル氏は、WTOによる貿易システムの履行義務が、人権と引き換えにされてはならないとして、次の4項目を新たなビジョンとして各国政府に提示しています。(1)「食糧に対する権利」を損なわせるWTO枠組みのもとでの合意は受け入れないこと(2)特別で差別的措置をもつ途上国では、とくにセーフガード措置が重要であること(3)国際貿易への過度の依存を避け、国内消費に見合うように小規模農民を重視して食糧生産能力を高めること(4)世界的な食糧供給チェーンにおける多国籍企業の市場支配力を規制すること。なお、公式の報告書は、3月に開催される人権委員会に提出される予定です。 (H・Y)
(新聞「農民」2009.1.26付)
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[2009年1月]
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